研究課題/領域番号 |
18K02120
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
戸井 宏紀 東洋大学, ライフデザイン学部, 助教 (00780397)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 精神保健福祉サービス / 刑事司法 / 地域連携 / 精神障害者 / 社会復帰 |
研究実績の概要 |
平成30年度は第一段階として、刑事司法システムに巻き込まれた精神障害者に対して、刑事司法手続きの各段階(警察段階、検察段階、裁判段階、矯正段階、保護観察・社会復帰段階)において、地域精神保健福祉サービスを活用する上での現状の課題を整理・明確化することに重点を置き、文献調査、関連学会における研究動向の調査と、収集した資料の整理・検討を行い、聞き取り調査実施のための事前検討を行った。平成30年6月に当該領域の国際学会(International Association of Forensic Mental Health Services)に参加し、多くの国において、ダイバージョンの仕組みを通して司法精神医療、矯正精神医療、および地域精神医療の三つのシステムが相互に乗り入れることにより、対象となる精神障害者が必要な支援を途切れることなく受けるとともに、回復を支えるための多様な社会復帰サービスが提供されている状況を確認した。また、精神保健裁判所とダイバージョンに関する小グループ会議では、欧米各国の実践家および研究者から、今後の研究推進に関連し有益な情報提供と助言を受けた。 こうした事前検討を踏まえ、研究計画に挙げた第一の連携モデル(地域司法精神保健福祉モデル)について、歴史的に司法精神保健福祉サービスが各地域に広く展開されてきている米国コネティカット州を対象として、平成31年3月に実地調査を行った。州精神保健福祉局司法サービス部門、州公的弁護人局および裁判所において、管理者およびソーシャルワーカーをはじめとする専門職と面談し、各部門の役割と、刑事司法システムに巻き込まれた精神障害者の社会復帰に向けた、刑事司法手続きの各段階における関連部門間の連携と、治療・教育プログラムの内容、および地域における精神保健福祉サービスとの連携について、聞き取り調査を実施するとともに資料収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度後半に計画した聞き取り調査が、業務日程調整により平成31年3月末に実施可能となったことにより、調査結果のとりまとめにやや遅れが生じたため。 新年度は早期に、聞き取り調査で得た情報と資料を統合的に検討し、刑事司法システムに巻き込まれた精神障害者に対して、刑事司法手続きの各段階において、地域精神保健福祉サービスを活用する上での課題について、第二の地域連携モデル(精神保健裁判所モデル)と比較検討する上での視点を明確化し、引き続き課題達成に向け研究を推進していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、第一の連携モデル(地域司法精神保健福祉モデル)について、調査結果に基づき、地域連携を支える関係者や専門職等人的資源の配置状況、予算規模や、個別プログラムの有効性に関する研究結果に関する情報も含め、包括的な分析が可能となるよう、引き続き調査を進めていく。 同時に、第二の連携モデル(精神保健裁判所モデル)について、刑事司法手続きの各段階における関連部門間の連携と、治療・教育プログラムの内容、および地域精神保健福祉サービスとの連携について実地調査を計画する。このモデルにおいては、精神保健裁判所(Mental Health Court)を中心に地域精神保健福祉サービスとの連携が進む対象州を選定し、裁判所、公的弁護人局、矯正局、精神保健福祉局といった州内各部門がどのように協働し、刑事司法システムに巻き込まれた精神障害者の社会復帰に向けた精神保健福祉サービスが提供されているか、現地における資料収集と関係者からの聞き取り調査を中心として、研究を進めていく。また、初年度の研究結果について、関連学会、論文を通して発表・報告を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度後半に計画した聞き取り調査を、業務日程調整により平成31年3月末に実施したため。当該額は、調査のための旅費支出として新年度初頭に使用を計画する。
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備考 |
戸井宏紀 アメリカにおける社会復帰支援の取組みについて 東京社会福祉士会司法福祉委員会学習会報告(招待あり) 2019年2月
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