研究課題/領域番号 |
18K02120
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
戸井 宏紀 東洋大学, 社会学部, 准教授 (00780397)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 精神保健福祉サービス / 刑事司法 / 地域連携 / 精神障害者 / 社会復帰 |
研究実績の概要 |
研究課題として取り上げた第二の地域連携モデル(精神保健裁判所モデル)については、2021年度(令和3年度)も感染症拡大の影響により現地調査は叶わなかったが、関連国際学会へのオンライン参加と研究動向の調査をもとに、刑事司法関連部門間の協働と、治療・教育プログラムの内容、そして地域精神保健福祉サービスとの連携に焦点あてて分析を進めることができた。その内容をもとに比較検討した結果、第一の連携モデルである地域司法精神保健福祉モデルが、日本における地域連携にも活用していくことが可能であると判断し、研究結果のとりまとめに向けて取り組んだ。 コロナ禍で2020年より延伸されていた国際学会International Conference on Practice Researchが5月にWeb開催され、これまでの調査結果をもとに、刑事司法手続きの各段階における、地域精神保健福祉サービスとの地域連携の課題について発表を行った。大会をきっかけとして国際的な実践研究グループが立ち上がり、これまで3回の研究会に参加し、意見交換と研究交流を進める機会を得た。 また、10月には専門職団体である東京社会福祉士会主催の刑事司法ソーシャルワーク研修会で、また11月にはソーシャルワーク研究会において、アメリカにおける地域連携の調査結果も踏まえた報告を通して、研究成果の普及にも努めた。 2021年度は都内自治体による地域再犯防止推進計画策定に委員として加わり、地域共生社会の実現を目指す中で、刑事司法システムに関わることになった人に対する地域連携について、多岐にわたる課題を確認することができた。最終年度となる2022年度は、これらの実践上の課題と、地域司法精神保健福祉モデルの有効性と適用可能性について検討を重ね、研究結果を取りまとめていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染拡大のため現地調査が困難な状況が続き、オンラインを活用した研究動向の調査と、国際学会への参加・発表を中心とした研究活動となったため。オンラインの利点を活かし、これまで参加することが難しかった学会へのアクセスも可能となり、情報収集の機会が広がる一方で、実地調査によるデータ収集をもとに研究課題を掘り下げてことに遅延が生じた。2022年度は国内の地域連携の実践への適用可能性と、それに際する課題検討を行い、最終年度のとりまとめと当初目標の達成に向けて、研究を進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度(令和4度)は、日本における地域連携にも有効に活用していくことが可能であると考えられる地域司法精神保健福祉モデルについて、刑事司法関連機関と地域精神保健福祉サービスとの連携における実践上の課題を検討していくとともに、研究全体のまとめに向けて取り組んでいく。特に、各地域で策定が進められている地方再犯防止推進計画においては、刑事司法に関与した複合的な生活課題を抱える人に対して、地域包括ケアシステムの構築を推進・深化させる中で、地域福祉の課題として捉えていこうとする視点も生まれつつあることから、いくつかの自治体・地域を対象として、地域司法精神保健福祉モデルの活用可能性について検討していきたい。 2022年4月には、関連領域の国際学会であるAcademic & Health Policy Conference on Criminal Justice Health(Web開催)に参加し、司法に関与することとなった精神障害を抱える人を支援していく際の、刑事司法手続きの各段階における、地域精神保健福祉サービスとの地域連携の課題について、研究結果を報告する予定である。また、国内の関連学会においても、これまでの調査結果を報告するとともに、本研究で明らかになったさまざまな実践上の課題を踏まえた提言を積極的に行っていきたい。 2022年度は最終年度であり、国内外の関連研究誌への論文投稿・発表を進めていくとともに、学会報告や関連領域の研究会などの機会を通して、研究成果の普及を図りたい。刑事司法手続きの各段階において、対象となる精神障害者が必要な支援を途切れることなく受け、社会復帰と回復を支えていくために、地域精神保健福祉の視点から、刑事司法システムと精神保健福祉サービスとのより有効な地域連携の仕組みを明らかにするという、本課題の目標の達成に向けて、研究活動を推進していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度に引き続き、新型コロナウィルス感染拡大が収まらず、第二の研究対象モデルである精神保健裁判所の聞き取り調査(米国)だけでなく、国内の調査や研究成果報告のための国内旅費支出がなかったため。当該額は、研究成果報告のための国内旅費支出、および研究成果のとりまとめのために、最終年度に使用を計画する。
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