研究課題/領域番号 |
18K02122
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
中村 律子 法政大学, 現代福祉学部, 教授 (00172461)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 新型コロナウイルス感染拡大 / 地域包括ケア / 高齢者 / マントルゾルフ / ビュートゾルフ / コミュニティ・ケア / 認知症ケア |
研究実績の概要 |
2020年度は、新型コロナ感染拡大の影響により海外渡航不可となり、調査地であるネパール、オランダを訪問しフィールド調査が実施できなかったため、現地の調査研究協力者などとのオンライン(Zoom)ミーティング、新型コロナ禍での高齢者の生活実態調査の実施と分析、資料収集を中心とした研究を行った。 ネパール研究では、新型コロナ禍による生活・家族関係・地域関係・ケア関係への影響、今後のデイケアセンター(HDCC)利用意向を明らかにすることを目的として、調査協力を得た高齢者19名に対して「新型コロナ禍における高齢者の生活実態調査」をネパールの調査研究協力者に依頼して実施した。また、その調査研究協力者やI地区高齢者とのオンライン(Zoom)ミーティングを18回行った。上記の調査ならびにオンライン(Zoom)ミーティングによって、ネパールでの新型コロナウイルス感染状況、ロックダウンによるコミュニティ・ケアの実態(高齢者への日常生活支援、独居高齢者宅訪問、経済的困窮への食料や経済的支援)、低所得・ホームレス支援などが明らかとなった。 オランダ研究においては、オランダの調査研究協力者に依頼し、新型コロナ感染拡大によって高齢者施設や在宅で生活する認知症高齢者のケアに関する論文や統計調査などの資料収集を行った。オンライン(Zoom)ミーティングは3回実施し、収集した資料内容や高齢者支援の実態について意見交換を行った。その結果、新型コロナウイルス感染拡大による影響として、家族・親族などのマントルゾルフの介護や支援の問題状況、高齢者の孤立・孤独・自死問題、認知症高齢者の認知機能の減退などが明らかになった。また、Sociale Wijk Team=ソーシャルヴァイクチームの支援実態、認知症高齢者の通所施設の現状と問題、課題が明確になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度は、本研究の最終年度でもあったため、ネパールならびにオランダにおける自立共生的で尊厳あるコミュニティ・ケアに関する研究の精緻化を行う予定であった。ネパールでの研究では、政府主導ではなくコミュニティ主体でコミュニティ・ケアが実現されている実態、自立共生的なコミュニティ・ケアの可能性を明確にするための補足調査を実施する予定にしていた。しかし、新型コロナウイルス感染拡大により渡航しての調査研究が実施できなくなった。そこで、ネパールの調査研究協力者やI 地区高齢者とのオンライン(Zoom)ミーティングを実施し、新型コロナ禍での高齢者の生活実態、デイケアセンターを含むコミュニティ・ケアの実態についてのヒアリングや議論を行った。 オランダでの研究では、高齢者ケアと相談支援についての自治体格差が生じている実態をより明確にするため、ルモンド市を調査対象として、具体的なケア構築や地域資源のコーディネートの実態に関するヒアリング調査を実施する予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染拡大により実施できなかった。そのため、新型コロナウイルス感染拡大がもたらすマントルゾルフ、ビュートゾルフのケアの実態と課題を明確にすることを目的として資料収集とその分析を行い、その内容をもとに調査研究協力者とオンライン(Zoom)ミーティングを実施し意見交換を行った。 世界的なパンデミックである新型コロナウイルス感染拡大は、ネパール、オランダ、日本における高齢者ケア、コミュニティ・ケアについて、「共通の」しかしその国独自の「特殊的」事情による様々な影響を与えていることが明確になった。また、各々の社会的地域的基盤のもとで展開される自立共生的なコミュニティ・ケアの仕組みに関する研究においては、感染症対策やパーソナルサービス、エッセンシャルワークを射程に入れた、新たなフェーズから検討する必要性が認識できた。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度当初から世界規模で始まっている新型コロナウイルス感染拡大によって、高齢者ケア、コミュニティ・ケア、さらには各々の社会的地域的基盤のもとで展開される自立共生的なコミュニティ・ケアの仕組みに大きな影響を与えていることが把握できた。しかしながら、本研究としては、新型コロナウイルス感染拡大によってネパール、オランダへの渡航禁止のために実証的な研究が実施できなかったことを鑑み、今後も実証的な調査研究を継続する。そのうえで、これまでの研究成果をもとに、新型コロナウイルス感染拡大前、新型コロナ感染下、さらには、新型コロナウイルス感染拡大を経験したことで、高齢者ケア、コミュニティ・ケア、自立共生的なコミュニティ・ケアのあり方にどのような影響や変化があったのかなどについて具体的に明確化していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度初頭から広がった新型コロナウイルス感染拡大によって、調査地であるネパール、オランダへの渡航禁止となり、フィールド調査が実施できず、成果をまとめることができなかった。 そのため、2021年度は、本研究成果をまとめることを第1の目的として、2020年度実施できなかった補足調査を行う。その補足調査実施にあたっては、ネパールやオランダへの渡航が可能になった場合は、両国における自立共生的なコミュニティ・ケアを実践している担当者へインタビュー調査を実施する。もし2021年度においても渡航禁止が継続された場合は、ネパール、オランダにおいて自立共生的なコミュニティ・ケアを実践している担当者へのオンライン(Zoom)インタビュー調査を実施し考察を行う。これらの研究成果を大学紀要などに投稿する。
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