研究課題/領域番号 |
18K02127
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研究機関 | 東京医療学院大学 |
研究代表者 |
内田 達二 東京医療学院大学, 保健医療学部, 准教授 (00715170)
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研究分担者 |
中村 裕子 社会福祉法人仁至会認知症介護研究・研修大府センター(研究部、研修部), 研修部, 室長 (10790371)
山口 友佑 社会福祉法人仁至会認知症介護研究・研修大府センター(研究部、研修部), 研修部, 研修指導員 (70809540)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 高齢者施設 / ケアの質 / ケア文化 / ロジックモデル |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,ロジックモデルによる高齢者施設のケア文化の指標を開発することである。文化とは人間の存在に意味を与える「重要な価値」であり,組織の風土やそのイメージを構成する価値観が含まれる。ケア組織の文化は,提供されるケアの質に大きな影響を与える。現代社会において高齢者施設のケアの質は大きな課題であり,ケアの質の改善にはよりよいケアを提供する組織へと成長していく文化が重要といえる。本研究によって組織の成長に必要な文化の醸成のプロセスを明らかにして,ケアの質の向上の指針とする。 今年度は,まず,ロジックモデルに基づいたケア文化の指標を策定した。昨年度実施したインタビュー調査の内容分析から,ケア文化が醸成されていく過程をロジックモデルとなるよう,それぞれの要因の関係性を検討して4つの基本構造に分類した。その結果,「インプット」8カテゴリー31項目,「アクティビティ-アウトプット」,「初期アウトカム」各5カテゴリー36項目,「中長期アウトカム」3カテゴリー52項目となった。この中で,「アクティビティー-アウトカム」と「初期アウトカム」は,一連の関連性を示しているため一つの領域として考えて,「初期アウトカム」を最終的な段階として採用した。それに「インプット」「中長期アウトカム」の項目を加えて,計119項目をケア文化の指標とした。 次によりよいケアサービス提供のための実践をしている専門家パネル8名を選出し,修正Delphi法の調査(オンラインによる2回の指標評価とフォーカスグループミーティング)を実施した。この中でパネルの評定が乖離している項目や重複項目を統廃合し指標案を作成した。作成した指標案は信頼性検討のため,別の専門家にパイロット調査を依頼し実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度は,共同・連携研究者と連携して研究の効率化をはかり,その結果スムーズに①ケア文化の指標に関する修正Delphi法を用いた調査の実施,②修正Delphi法の調査結果の解析とケア文化の指標の策定,ならびに③ケア文化の指標の予備調査まで実施できた。しかし,研究責任者の介護上の問題により,その後の調査の遂行が滞ってしまい,④ケア文化の指標の信頼性,妥当性検討のための全国アンケート調査が実施できなかった。 コロナウィルス感染症による研究計画の変更とその手続きによる遅延,ならびに今年度の遅延により研究予定が大幅に遅れてしまったが,次年度は全国アンケート調査を実施し,論文にまとめる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,指標の信頼性と妥当性のアンケート郵送調査を実施する。独立行政法人福祉医療機構の運営するインターネットサイトWAMNETに公表されている全国の高齢者施設のデータベースから層化二段無作為抽出法にて施設(介護老人保健施設,老人福祉施設,グループホーム)を選定する。第1次抽出単位として,全国を6ブロック(北海道,東北,関東・甲信越,関西,中・四国,九州・沖縄)に分け,大都市・その他の市・郡部に層化して500施設抽出する。これまでの調査から,施設の理念や教育体制,組織内のリーダーシップがケア文化の重要な要因との意見が多くあがったので,それらに焦点を当てられるよう調査を実施したい。その一つとして,組織内の役職が文化の認識に影響すると考えられるため,一施設につき施設責任者,主任,役職無しの職員と複数回答を依頼する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度,当初の研究計画では対面で実施する予定であった修正Delphi法の調査がオンラインでの実施となった。また,学会や研究会への参加ができず,社会的状況からケア現場の観察調査が困難となり,予算計上していた旅費や人件費・謝金等の費用が執行できなかった。 次年度は,ケア文化の指標策定のために下記の費用を計上する予定である。 1) アンケート調査実施のための印刷費,郵送費 2)研究成果発表(学会,論文発表)の経費
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