研究課題/領域番号 |
18K02131
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
藤原 正範 鈴鹿医療科学大学, 保健衛生学部, 教授 (90410935)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 司法ソーシャルワーク / 立ち直り支援 / 地域生活定着支援センター |
研究実績の概要 |
3つの研究目的について、以下のとおり報告する。 1.全国各地の地域定着支援センターの調査:2018年度に引き続き、全国地域生活定着支援センター協議会、各都道府県地域生活定着支援センターから発信される活動状況に関わる情報を調査した。 2.民間組織による新しい発想による立ち直り支援の調査:「NPO法人再非行防止サポートセンター愛知」、「NPO法人静岡司法福祉ネット明日の空」、「NPO法人岡山・ホームレス支援きずな」、及び個人で障害・高齢の被告人の刑事裁判のサポート活動を行う原田和明(社会福祉士)の4者と「司法ソーシャルワーク研究会」を開催した。この研究会では、各団体の活動の実際をお互いが視察によって把握し自らの活動改善につながるようにした。また、前年度に引き続き、刑事裁判への心理専門職の関与活動を行う「司法心理研究所」(連携研究者橋本和明が代表)との合同集会を開催した。2019年11月、刑事被疑者・被告人、受刑者、仮釈放者を実際にサポートしつつその研究を進め、併せてその担い手を養成する活動を活性化することを目指して、「司法ソーシャルワーク研究所」を設立した。これは過去2年間の「司法ソーシャルワーク研究会」を発展させたものである。2019年12月、東京、大阪において「司法ソーシャルワーク研究所」・「司法心理研究所」の合同研究集会を開催し、その中で本研究の中間報告を行った。 3.国際動向の調査:2019年6月に開催された「2019 NOFSW Conference」(2019年全米司法ソーシャルワーク機構大会)」において、研究者2名・実践者1名と共同で本研究に関わる研究発表(ポスター)を行った。同大会では、連携研究者須藤明・橋本和明が共同で、村尾泰弘が単独で研究発表(ポスター)を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当職は、本研究に並行して公益財団法人三菱財団社会福祉事業・研究助成による研究「司法に関わるソーシャルワーカーの研修プログラムの開発」(2018年12月~2020年11月)に取り組む。本研究と三菱財団助成研究は、司法ソーシャルワーカーには一般的なソーシャルワーク活動と異なる知識、方法・技術が求められるという考えのもとにお互い補い合う関係にある。とりわけソーシャルワークの要である資源開発は一般福祉と異なる視点に立って検討されることが必要である。 研究期間2年目の本年度、本研究の目的と類似の問題意識を有する団体・個人と「司法ソーシャルワーク研究所」を設立した。この組織において、本研究目的に沿う活動がより充実したものになると確信している。 アメリカ合衆国の司法ソーシャルワーカー団体(NOFSW)の大会(2019年6月)において、連携研究者3名などと3本のポスター発表を行った。この大会にはアメリカ合衆国だけでなくカナダ、オーストラリア、ウェールズからの参加もあり、各国ソーシャルワーカーの活動状況を知ることができた。これによって本年度の目標である国際的学術交流は大きく前進した。また、日本司法福祉学会第20回全国大会(2019年8月)でのパネルディスカッション、合同研究集会(2019年12月)での講演・パネルディスカッションにおいて、本研究の成果を発表した。本研究の経過を公開する活動を十分に行うことができたと考えている。 当初の研究計画で予定していなかったが、NOFSW元会長Tina Maschi他1名編集による「Forensic Social Work (Second Edition)」(Springer Publishing Company、2018年、司法ソーシャルワークの体系的書籍)の翻訳権を取得し、2019年3月末から連携研究者など12名と共同で翻訳作業を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は研究期間の最後の年になるので、本研究のまとめに入りたい。以下の研究活動を行う計画である。 1.各都道府県の地域生活定着支援センターの活動状況の把握を中心としつつ、刑事被疑者・被告人、受刑者、仮釈放者などを系統的、組織的にソーシャルワーカーがサポートするという視点で、日本の司法ソーシャルワークの現状と問題点を明らかにする。 2.「司法ソーシャルワーク研究所」・「司法心理研究所」の合同研究集会(2019年12月、東京・大阪)の記録集を刊行する。そのほか過去2年の「司法ソーシャルワーク研究会」の研究成果、国際的学術交流から得た情報を整理し、犯罪者の立ち直り支援のための資源開発に関わる一定の展望を示したい(公開講座、冊子等)。 3.引き続く国際交流活動として、2020年7月開催のSWSD2020(2020年世界ソーシャルワーク・社会開発会議、カルガリー)への参加を準備していた(2020年2月発表受理)が、コロナウィルス流行により開催中止となった。パンデミックの現状を考えると2020年度の国際的学術交流は中断せざるを得ない。司法ソーシャルワークの日本での展開を検討するに当たって、IFSW(国際ソーシャルワーカー連盟)、NOFSW等の活動の把握は必須であり、国際的学術交流の活動を2021年度以降に引き継ぐ準備に努めたい。また、「Forensic Social Work (Second Edition)」の翻訳について、向こう2~3年内の日本語訳の完成を目指したいと考えている。
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