本年度は、本研究成果の総括とその公表のために、次の2つの研究活動を行った。 1.2022年6月18日、東京都新宿区において第2回総括研究集会・シンポジウム「依存症と刑事裁判」を開催した。2021年10月3日の第1回総括研究集会において、犯罪者の真の立ち直りには、依存症の被疑者・被告人のための資源開発が有効かつ重要であることが焦点化された。本企画は、その課題を深めるとともに、本研究が明らかにしたものと残された課題を明確化することを目的としたものである。刑事司法手続のみで当事者の立ち直りを図ることは困難であり、刑事司法に関わる法律・法務の専門職と民間団体との協働が重要である。2009年からの地域生活定着支援センター設立により、刑務所出所後の支援は前進し、高齢者や知的障害のある人には大きな効果を上げている。しかし、依存症など精神疾患のある人への支援は依然として困難であり、刑務所への出入りを繰り返す、いわゆる「回転ドア」と言われる現象を生んでいる。精神疾患のある当事者に対しては、被疑者段階から、社会福祉士・精神科医・心理専門職・元当事者などによるチームが、弁護士など法律専門職の活動に一貫して関わることが必要であり、今後はそのような資源開発を行う必要がある。ただ、そのための財政確立と担い手確保という大きな課題がある。 2.2023年3月、本研究の最終報告として、2021年・2022年に開催した2回の総括研究集会の報告を中心とした「司法ソーシャルワーク研究報告書Ⅱ」を刊行した。 本研究が残した課題は、本研究代表が研究代表を務める基盤研究(B)「刑事裁判の弁護活動へのソーシャルワーク専門職の関与のあり方に関する総合的研究」に引き継いだ。定例のオンライン研究会の開催、立ち直り支援に関わる全国各地の情報収集、国際的動向の把握については、本年度、基盤研究(B)の活動として実施した。
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