研究課題/領域番号 |
18K02134
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研究機関 | 大和大学 |
研究代表者 |
大村 和正 大和大学, 政治経済学部, 准教授 (30571393)
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研究分担者 |
天野 敏昭 神戸大学, 国際文化学研究科, 協力研究員 (40736203)
居神 浩 神戸国際大学, 経済学部, 教授 (70289057)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 若者の参加 / シティズンシップ教育 / 英国の若者市長 / 大学生への就労支援 / 大学生の就職困難性 / 若者の社会的包摂 |
研究実績の概要 |
天野敏昭「大学生の就職困難の可能性と大学支援に関する調査」大阪府政策立案支援調査報告書・大阪府商工労働部、No.179、2020年3月、pp1―92。 天野敏昭和「中小企業における精神がい害者・発達障がい者の雇用・定着のポイントに関する調査」大阪府政策立案支援調査報告書・大阪府商工労働部、No.180、2020年3月、pp1―90。 前者は、発達障がいの傾向等により安定できない可能性のある大学生に着目し、大阪府における大学生の実態と大学における支援の現状を明らかにした。後者は、精神・発達障がい者の雇用と当事者の活躍に向けた大阪府の中小企業の取り組みを考察した。 大村和正「イギリスにおけるシティズンシップ教育の政治―政治教育と若者の参加をめぐる問題」、石田徹・高橋進・渡辺博明編『「18歳選挙権」時代のシティズンシップ教育』法律文化社、2019年、pp104―123。2018年度実績未記載事項。 シティズンシップ教育をテーマにした上記書で英国のシティズンシップ教育に関する章を執筆した。本科研のテーマに関連して、2017・2018年に英国で調査を行ったロンドン南部ルイシャム区の若者市長(young mayor)に関して記述した。英国の若者市長は我が国ではなじみが薄く、ルイシャム区の若者市長に関する研究成果は本稿が初めてのものであると思われる。本書はシティズンシップ教育をテーマにした著作であるが、本章でルイシャム若者市長は若者の社会的包摂や若者の社会参加という点から意義と可能性があることを、現地でのインタビュー調査等から示した。若者市長を対象にインタビューを行うことができなかったが、ルイシャ区の若者市長担当者や若者市長を補佐するその地区の若者を対象に実施した。本科研のテーマとの関連では、若者の政治参加に関して立ち入った考察を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度に立命館・梅田キャンパスで5回研究会を行った。神戸、京都、北河内地域、高知県のサポステを調査した。サポステ・アンケート調査の質問紙を全国177カ所のサポステに郵送し、同内容のアンケート調査をウエブでも送信した。最終的に30カ所のサポステから回答(質問紙で18、ウエブで12)を得た。8月にSchool-Home Support、Manour House Development、Acknowledging Youthなど、若者就労支援問題等に関する英国の民間団体や専門家に調査を行った。 全国サポステ・アンケート調査からは以下の知見を得ることができた。単年度契約では事業継続性に大きな不安を感じる団体が多いこと。サポステのスタッフに求めたい資格としてはキャリアコンサルタントが最も多く、次に臨床心理士が多いこと。就労支援を重視している一方で、障がいや診断書はないものの発達障がい等があることが推察される相談者への対応が求められる傾向があること等を明らかにした。 各地のサポステ調査では、若者の就労支援事業の他、日常生活支援や社会的自立支援も必要であること、職場体験等の取り組みが重要であること、地元企業等、地域のアクターとの連携が重要であること、単年度契約のため事業の継続性や長期的展望を持つことが困難であることなど、サポステ全体に共通していると思われる要素が認められた。他方で各地のサポステの地域的な特性も認められた。 英国での若者就労支援に関する民間団体等への調査で、就労支援以外の日常生活支援の重要性、地域のアクターとの連携の重要さ等、日本と共通する面も認められた。他方で貧困家族を重視する政府の政策や歳出削減の影響等、英国特有の事情も認められた。 以上の調査等の研究活動から、日本のサポステを中心に若者のアクティブ・インクルージョンを考察するうえで有益な様々な知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の全国サポステのアンケート調査は177カ所の中で30カ所しか回答を得ることができなかった。アンケート調査紙(オンラインも含め)の回収率が低いことが課題となっているが、差し当たり回収したアンケート調査の結果を精査して、何らかの形で研究成果に反映させたいと考えている。 アンケート調査の回収率(の低さ)を補うためにも、あるいは質的な調査として各地のサポステ訪問調査に関して、これまでの調査結果を総括して、更にサポステ訪問調査を行いたい。しかし3月以前に関西地域で複数のサポステ訪問調査を予定していたが、3月以降新型コロロウイルス問題の影響により、さらなるサポステ調査を行うことが難しくなっている。今年度が本科研の最終年度であるが、さらなるサポステ調査に関しては、出来ることなら本科研の期間を1年延長して、可能な範囲内で調査を実施したいと考えている。 この点はサポステ調査だけでなく、サポステ以外の若者就労支援の民間団体、本科研の調査対象である認定フリースクール「学びの森」、若者支援団体や研究者を対象とした英国調査も同様である。 当初の想定では今年度秋期の社会政策学会で報告を行う予定であった。しかし上記の新型コロナウイルス問題の影響による調査の中止・延期のため、予定を変更して、今年度末の社会政策学会関西部会で、今年9月までのサポステを中心とした様々な調査結果を精査して報告を行い、これを基に社会政策学会の学会誌その他の学術雑誌に研究成果を公表することを目指したい。サポステ調査だけでなく、更に認定フリースクール「学びの森」その他の調査も含め、本科研の研究成果を書籍としてまとめる方向で研究を進める所存である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス問題の影響等により、研究・調査が予定通り実施することができていないため。
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