研究課題/領域番号 |
18K02134
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研究機関 | 大和大学 |
研究代表者 |
大村 和正 大和大学, 政治経済学部, 准教授 (30571393)
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研究分担者 |
天野 敏昭 神戸大学, 国際文化学研究科, 協力研究員 (40736203)
居神 浩 神戸国際大学, 経済学部, 教授 (70289057)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 若者の社会的包摂 / 若者の就労支援 / アクティブ・インクルージョン / 若者サポステ / ケイパビリティ / 「承認」 |
研究実績の概要 |
2021年11月26日(金)共生社会システム論研究会(会場、エルおおさか、対面形式とオンライン形式のハイブリット型)で、当科研の研究代表者の大村が、これまでの科研の研究活動の成果の一部を報告した。就労支援に傾斜しているワークフェア型の支援の問題と、調査してきた若者支援現場の観察も踏まえて、当事者の自主的な変容や、それを促す周囲の環境や社会的な人間関係が重要であること、これらを概念化した能動的な参加を重視するアクティブ・インクルージョン概念やケイパビリティ・アプローチの重要性を報告して、当科研メンバー以外の研究者から活発な議論を行った。 2022年1月10日(月)筒井美紀氏の高卒の就労支援に関する科研との合同研究会で、当科研の研究分担者の天野から、サポステ・アンケート調査や各地のサポステ調査の内容に関する報告を、研究代表者の大村からアクティブ・インクルージョン概念や政策に関する動向や問題点に関して報告を行い、筒井科研のメンバーの研究者と議論を行い、若者就労支援をめぐる問題や調査・研究上の課題に関する認識を深めた。 研究代表者の大村は、論文「ワークフェアからアクティブ・インクルージョンへ―イギリスの社会的包摂政策の動向と問題」を『大和大学研究起用第8巻(政治経済学部編)』を投稿(2022年3月刊、pp81-92)、就労促進に傾斜した政策の動向や問題点を明らかにして、当科研のテーマであるアクティブ・インクルージョン概念やケイパビリティ・アプローチの重要を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度は以下の調査を実施した。8月6日(金)就労困難な若者の就労支援を行っている民間団体ミライエの調査、9月6日(月)堺地域若者サポートステーション(以下、堺サポステ)の調査、11月17日京都中小企業同友会(以下、京都同友会)のソーシャル・インクルージョン委員会を調査。いずれの調査も科研メンバー3名(大村、天野、居神)が参加。これまでの当科研の地域若者サポートステーション(以下、サポステ)調査や若者支援の民間団体の調査と同様、若者の就労支援のあり方や課題に関して興味深い知見を得ることができた。本科研のテーマである能動的な参加による社会的包摂(アクティブ・インクルージョン)概念の具体的事例として重要な知見を得た。今回の調査事例に関して、ミライエや堺サポステの運営団体は、就労困難な若者の中で、知的障害や発達障害に近い、つまり観察していると知的障害や発達障害に近いと思われるが、当人にその自覚がなく、障害手帳をもたないなど、グレーゾーンの就労困難な若者を対象にしていることが比較的多いことが印象に残った。就労困難な若者への取り組みを考えるうえで、障害とのグレーゾーン層の若者の特性を踏まえた検討を進めることにしたい。今年度の調査では、これまで調査対象にしてきた若者支援の団体だけでなく、就労の受け皿になっている企業側も調査したいと考え、障害者などの就労困難者の支援に取り組んでいる企業が集まっている、京都同友会のソーシャル・インクルージョン委員会を調査した。 2021年8月に再度、全国のサポステへのアンケート調査(web方式)を実施した。この調査の内容の精査は今後の課題である。 コロナ火禍の影響で、その他の予定していた調査が実施できていないため、予定より進捗状況が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに実施してきた全国サポートステーションのアンケート調査や、大阪府、京都府、兵庫県、高知県の地域若者サポートステーション(以下、サポステ)や若者就労支援の民間団体の対面式の調査の内容を精査して、関西以外の地域のサポステを実施することを計画している。必要に応じて、これまで調査したサポステの再調査も実施したい。 新しい方針として、今後は支援団体だけでなく、若者の就労を受け入れる企業や地域なども調査する方針。すでに調査した明石サポステの担当者を通じて、就労困難な若者の就労を受け入れている明石のマクドナルドなどを調査する予定。 当科研の調査・研究の進捗状況はやや遅れているが、コロナ禍の影響で、なかなか調査が進んでいないことが大きな要因である。現地での対面調査が好ましく、コロナ問題が解消されることを期待したいが、完全なこの問題の解消は当面は期待できないと思われるので、今後は必要に応じて、オンラインを活用した調査も試みることで、適切に調査を実施していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響などで予定していた調査を実施することができなかった。引き続き調査を実施することで、経費を執行していく予定である。
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