研究課題
最終年度は,新型コロナウィルス感染症流行により進展が遅れていた調査が可能となった.分析は日常的な生活支援ニーズについて世帯状況と認知機能の低下に着目して行った.高齢者日常生活支援ニーズリスト(6因子構造:家事,家族的支援,余暇,社会参加,受療,権利擁護,Cronbachα0.68~0.89)でニーズを評価した.MMSE-J得点から低下群(23点以下),低下疑い群(24~26点),健常群(27点以上)に分類した.解析方法は認知機能及び世帯状況(独居・夫婦のみ・その他家族と同居)を独立変数,各因子得点を従属変数とした対応のない2元配置分散分析を行った.結果,各因子に交互作用はみられず,世帯状況は権利擁護を除く5因子に主効果があった.多重比較では家事,余暇はその他同居と独居・夫婦のみ,家族的支援は独居と夫婦のみ・その他同居に,社会参加,受療については独居と夫婦のみに有意差がみられた.日常生活支援ニーズは認知機能低下疑い群の時期から高くなること,世帯状況によってもパターンが異なり複雑であるため,包括的な日常生活支援の提供には世帯状況や認知機能低下を考慮に入れた支援体制が重要であることが示唆された.また,認知症支援拠点での支援者5名対象にしたフォーカスグループインタビューの結果,拠点で行った日常生活支援について18のサブカテゴリと9のカテゴリが抽出され,それらは4つの大カテゴリに集約できた.【信頼感の醸成】を基盤にした<心理的サポート><信頼関係の形成>がつくられた後に,<安否確認><受療サポート>など【生命・身体の健康の維持】や<家事支援><私的領域支援><情報的サポート><関係者との連絡調整>など【基本的な生活支援】が行われ,<アドボカシー>を含む【本人の希望(権利)尊重】しその実現に向けて取り組む事が可能となっている状況が見いだされた.
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