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2018 年度 実施状況報告書

「地域記憶」づくりによる震災復興支援プログラムの開発と評価

研究課題

研究課題/領域番号 18K02144
研究機関名古屋大学

研究代表者

伊藤 美智予  名古屋大学, 予防早期医療創成センター, 准教授 (10594046)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード地域介入プログラム / プログラム評価 / 復興支援
研究実績の概要

本研究の目的は、被災地の地域コミュニティ再構築のため、「地域記憶」づくりによる復興支援プログラムを開発し、その有用性を評価することである。「地域記憶」とは、住民らから収集する写真やホームムービー等をもとに編集される地域住民の生活の変容を映す映像である。2018年度は3年構想の初年度であり準備期として位置づけた。以下4点について検討した。
第1に、研究フィールドの組織化である。研究フィールドは、熊本地震で甚大な被害を受けた熊本県A村とした。A村の行政関係者を対象に、研究の趣旨等に関する説明会を行い、研究内容に関する意見交換を行った。A村の介護サービス事業所や住民にも研究趣旨等を説明し、研究推進に協力が得られる環境を整えた。当初予定していたA村での拠点整備までは至らなかったが、研究協力者と良好な関係を構築できた。
第2に、A村において実現可能な「地域記憶」づくりの方策について研究協力者らと検討を重ねた。①被災からの復興過程にあるため、行政や住民に大きな負担にならないようにする、②地域住民らによる写真を活用した地域生活の変容の記録化がすでに行われており、それとの差別化が必要など考慮すべき点を確認し、地域介入方法とスケジュールの見直しを行った。具体的には、①「地域記憶」づくり(1-2年目)、「活用」(3年目)、「評価」(3年目)の3段階で進める、②一部の地域・人から始める、③「地域記憶」の映像は、高齢者サロンでの地域回想法や小学校での地域教育の素材としての活用可能性を探る等である。
第3に、評価方法の検討である。地域介入プログラムの評価のため、先行研究のレビューを通し、高齢者や小学生への影響を測定する調査項目の収集を開始した。
第4に、地域映画の手法により地域介入研究の実績を有する研究者へのヒアリング調査を行った。具体的な地域介入の進め方や工夫、直面した困難などについて把握した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2018年度はA村を2回訪問し、初年度の中心的課題であった研究フィールドの組織化に努めた。限られた訪問回数であったが、行政との意見交換を進めることができたこと、新たな研究協力者(住民)を獲得できたこと等において、一定の前進を得た。他方で、被災からの復興過程にあり、当初予定していた円滑な研究推進のための現地での拠点づくりは現時点では困難そうであること、A村のそれぞれのコミュニティによって被災後の状況が大きく異なるなど、研究を推進するうえでさらに検討・調整を要する課題も明らかになった。このため、「やや遅れている」と評価した。
本研究のように、地域介入プログラムの開発・評価を志向する実証研究においては、研究フィールドの組織化が重要である。地域のさまざまな事情を理解し、住民ら関係者の声に耳を傾けながら、研究を推進していく必要がある。当初の予定を若干修正し、2年目上半期にかけても、研究フィールドの組織化を丁寧に進めていく。

今後の研究の推進方策

2019年度は、研究フィールドの組織化を加速させるとともに、「地域記憶」づくりに本格的に着手する予定である。
「地域記憶」づくりでは、映像制作の専門家の協力を得て、1)シナリオづくり、2)取材活動、3)DVD製作を行う。1)シナリオづくりでは、①全体の構成、②各要素(遊び、仕事、家族、くらし、祭り、行事など)の具体的内容、③具体的な質問事項、④協力者の選定作業を進める。2)取材活動では、①協力依頼、②インタビューと撮影を行う。これらの映像データをもとに3)DVDを製作する。
加えて、地域サロンプログラムの開発可能性についての予備的検討を行いたい。本研究では、「地域記憶」づくりのプロセスを、1)復興支援、2)将来的に他地域に応用可能な地域サロンプログラムの開発という2つの側面から捉えていた。しかし現段階では、特に2)へのアプローチが弱いと思われる。2)へのアプローチを強化するため、別フィールドも視野に入れプログラムの開発可能性を検討する予定である。

次年度使用額が生じた理由

2018年度に未使用額が生じたのは、連携研究者の旅費の負担をしなかったこと、現地マネジメント業務で計上していた業務委託に係る予算を執行しなかったことなどが主な理由である。未使用額として計上した研究費については、2年目以降もこれらの使途で使用するとともに、別フィールドにおける地域サロンプログラムの開発の可能性を探る予備調査等に使用する予定である。
2019年度は、研究フィールドの組織化と「地域記憶」づくりのため、3-4回程度フィールドを訪問する予定である。そのための旅費を計上した。「地域記憶」づくりを映像制作の専門家に委託するための費用を計上した。シナリオ作成や現地同行による撮影、編集作業を担当してもらう予定である。また、現地でのマネジメント業務を担う拠点づくりのため、業務委託費を計上した。

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公開日: 2019-12-27  

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