平成30年度の研究では、ドイツを調査対象に、①介護保険制度改革後の介護保険の動向や家族支援策の現状と課題について現地調査を行った。また、②家族介護者たちの生活困難や社会的困難に関わる問題を明らかにするために現地調査を行った。さらに、③ドイツの文献をもとに、介護する家族の問題と社会的支援の現状に関する文献調査も行った。 ①介護保険制度改革後の介護保険の動向や家族支援策の現状と課題については、ドイツの介護保険改革の展開は、認知症支援と家族介護者支援に重点を置くものである。報酬面での手当を厚くし、家族介護者の社会的評価を認めるものであるが、認知症の介護支援も同様に、供給体制の問題が家族支援を難しくている現状が明らかになった。また、保険料負担の上昇など、持続可能な制度の運営という点では、認知症と家族支援が課題である同様の課題を持つ日本にとっても示唆となるものである。 ②家族介護者たちの生活困難や社会的困難に関わる問題については、アルツハイマー協会や家族介護者支援団体でのヒアリングを行った。介護保険改革後も家族介護負担は軽減されておらず、家族介護負担の軽減のための家族手当とその他の支援策との連携が課題であることが明らかになった。 ③介護する家族の問題と社会的支援の現状に関する文献調査では、介護と仕事の両立支援の現状について整理した。両立支援制度は充実しつつあるが、実際の制度の運用には課題があり、利用を促進するための支援が不可欠であることが見いだされた。
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