研究実績の概要 |
本研究は、虚弱高齢者の作業遂行能力に焦点をあて、施設型支援プログラムを開発することを目的としている。初年度である平成30年度は、予備的研究として、地域在住高齢者を対象に効果検証を行った。 本研究の目的は, 地域で生活する介護予防・日常生活支援総合事業(以下, 総合事業)の対象者に対して開発した生活行為の可能化プログラム(実験群)を実施した場合, 心身機能の向上プログラム(対照群)と比較して生活目標(GAS-L), QOL(WHO/QOL26), 生活機能(TMIG-IC), 生活満足度(LSI-Z), 体力に違いがあるのか検証することである. 対象 は東京都 A 区に在住する 65 歳から 85 歳までの総合事業対象者で,地域単位で実験群と対 照群に割り付け, 成果指標の前後差を比較した. 分析対象者は実験群13 名, 対照群12 名で, 前後差を比較した結果, 全ての項目に有意差はなかったが, LSI-Z と Timed up and Go Test (TUG)に中程度の効果量があり, LSI-Z は実験群, TUG は対照群の中央値が高かった. 本研究より, 生活満足度の向上には実験群, 心身機能の向上には対照群が有効である可能性が示された一方で、生活行為の可能化のためには実験群のプログラムを修正する必要があることが示唆された. この予備的研究で得られた知見は、次のとおりである。第1に、作業遂行能力に焦点をあてたプログラムを行う場合、実際の備品を用いて参加者に生活行為の実体験を促す必要があることがわかった。第2に、作業遂行能力に焦点をあてる場合においても、社会参加に関する目標や意識を明確にする必要があることがわかった。第3に、実施可能性、再現性を確保するためにも、講義担当者が使用するレクチャーノートが重要であることがわかった。
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