研究課題/領域番号 |
18K02152
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研究機関 | 神奈川県立保健福祉大学 |
研究代表者 |
吉中 季子 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 准教授 (70434800)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 単身女性 / 公的年金 / 高齢期 / シングルマザー / 経済的DV |
研究実績の概要 |
2018年度は、大きく以下の2点からの検討を行った。 第1に、女性の非正規労働と年金加入に関する実態について、家族モデルへの依存から検討した。非正規労働の女性はその働き方によって将来の年金受給に影響を及ぼすことを整理した。公的年金制度には一定の家族モデルが組み込まれているために、多くの女性が非正規労働に従事している現状がある。女性はパート労働に代表されるような非正規労働の中心であるが、家族に包摂されて非正規労働の問題は見えにくくなっている。しかし、離婚などでその包摂から外れたときに一般的なワーキングプアの問題となってしまいかねない現実を示した。そこにはまた、非正規労働者が置かれた年金制度へのアクセスの圧倒的な不利がある。女性は高齢期になれば低年金に陥りやすいことから、制度修正として、年金離婚分割や厚生年金の適用拡大が施行されるものの、それほど効果は表れていないことを厚生労働省の既存統計から明らかにした。さらに、公的年金制度における第3号被保険者や遺族年金は、一見、女性を優遇する制度であるかのようだが、家族(主に夫)に依存しているあいだは貧困は見えにくく、その後、自分自身の収入が低いまま離死別により単身になれば、「依存」してきたことによる高齢期の貧困となりかねないことを示唆した。 第2に、その実態を具体的な事例から把握・検証するために、シングルマザーとなった女性5人のインタビューを実施した。シングルマザーとなったプロセスには、カップルでいたときにそのほとんどがDV関係にあったことが語られた。そのなかで、本人はそれがDVであるとの認識に及ばないが、全員が経済的DVを受けていた。直接的ではないにしろそのことが結果として年金の加入に影響を及ぼしていた実態が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インタビュー等は順次進めており、研究自体は順調である。しかし調査を進めるにつれ、やや、制度の基礎的理解と制度改定に向けての最近の議論、あるいは周辺分野の文献の検討を同時並行して進める必要があると考えている。また、インタビューにより、一見、無関係であるような年金加入と家庭内のDVについての影響も語られた。この点についてもさらに検討を深めたい。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は引き続きヒアリングをすすめ、可能な限り多くの事例から、その職歴・結婚歴・家族歴から、傾向を見出したい。 また、年金制度の中で女性がどのように扱われてきたのかを、制度変遷から検討を行う(論文執筆予定)。
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次年度使用額が生じた理由 |
人件費等が予定より若干低く抑えられたため。研究遂行に影響しない程度の少額であり、参考書籍などを購入予定。
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