本年度は、これまでのインタビューなどをまとめ、理論的整理を行い、研究成果を所属学会誌に投稿し掲載された。 また、5年ぶりに厚生労働省の「ひとり親等全国調査」の結果が公表されたことに伴い、その結果から分析し、最近の傾向について、論考を発表した。 本年度の研究の成果は、論文などの要約も含めおおむね以下のとおりである。単身高齢女性の貧困の現状を念頭におきながら、シングルマザーの公的年金加入をめぐる諸問題を検討した。そのために、研究期間内に行ったシングルマザーを対象とした生活実態調査(アンケート調査、聞き取り調査)の結果から、シングルマザーになる前と後での年金加入の変化を分析した。その分析からは、高齢期の低年金が予測され、その要因として、離婚や死別と同時に年金加入の移動が強いられ、細切れ的で不安定な加入になっていること、自分の将来の年金より現在の子育ての生活を優先していること、年金加入に対する認識の低さなどが明らかになった。さらには、離婚前の働き方がパート労働として固定化されることにより、年金加入が、家族依存に基づく働き方や子育てによる時間の制約も影響し、将来構想が抜け落ちている傾向があり、そのことがまた離婚後の仕事もパート労働につきやすい傾向が高かった。また、いわゆる第3号被保険者制度の評価に関していえば、離婚前の専業主婦のメリットが、離婚後はデメリットに転化し、結果として安定した年金加入の困難に帰結していることが明らかになった。
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