研究課題/領域番号 |
18K02165
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研究機関 | 淑徳大学 |
研究代表者 |
山口 光治 淑徳大学, 総合福祉学部, 教授 (90331579)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 高齢者虐待 / 養護者支援 / ソーシャルワーク / 自治体調査 / 養護者アセスメント / ソーシャルワーク実践 |
研究実績の概要 |
2019年度は、推進母体である高齢者虐待養護者支援研究会での検討を行いながら、主として、①市区町村における高齢者虐待の養護者支援に関する全国実態調査の集計と分析、②養護者支援のあり方に関する事例研究調査の実施、③養護者支援の手引きの開発のためのツールの企画・開発に取り組んだ。 ①では、国の調査結果の「養護者による高齢者虐待の事実が認められた事例の件数」が400 件以上の11 都道府県の市区町村を対象に記名・自記式の郵送調査を実施し、主として量的な分析を試みた。その結果、養護者の介護負担軽減以外の個別課題への支援として、経済的支援、医療的支援、福祉・介護支援が行われているものが全体の4 割を占めていること、養護者支援の具体的な内容として被虐待高齢者のケアプラン見直しや介護保険サービスの利用増、施設利用等の入所支援、養護者に必要な専門的支援が受けられるように他部署・他機関への紹介および調整が8 割以上あること、また約7 割の職員が養護者への関わりに困難さを感じていることなどが明らかになった。この成果は、日本高齢者虐待防止学会で発表し、学会誌にも採用され掲載された。 ②では、全国調査を契機に、5カ所の自治体の協力を得て、共同研究を実施した(継続中)。29年度終了の先行研究成果「虐待をしている養護者のタイプ分類と支援方法」を用いて、現在対応している養護者支援に活用していただき、タイプ分類の適合の可否、適合するタイプがない場合は新たな分類の検討・策定を行い、養護者支援の視点と具体的方法の修正、新たな知見の蓄積を進めている。 その研究過程において、「養護者支援のためのアセスメント補助シート」の必要性とその補助シートを使用するにあたっての説明資料の必要性が指摘され、最終年度に作成予定の③に組み入れるために、研究会メンバーを中心に作成をはじめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自治体の事例提供への協力姿勢の違いや自治体担当者との検討会の日程調整には困難が伴うものの、概ね計画に基づき進んでいる。ただし、2020年1月以降の新型コロナウイルス感染症の影響で、その後の事例検討は進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は,以下の事項を計画している。 養護者支援の手引きの開発:各種調査と並行しながら、①虐待をしている養護者への支援、②分離後の再統合を検討する際の養護者支援、③高齢者虐待と判断できない見守り状態の養護者支援、④専門職が「養護者支援の困難性」を整理できる支援などを検討する際に役立つ養護者支援の手引きを開発する。 報告会の開催、報告書のとりまとめ:本研究全体の総括を行い、研究成果を報告書(養護者支援の手引き)や報告会という形で公表していくとともに、学会等でも成果を積極的に報告する。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額が出たのは、5自治体の協力による事例研究調査において、当初の訪問回数が先方の都合で確保できず、交通費等の支出が押さえられたこと、養護者支援研究会の回数が計画よりも少なく、謝金や交通費が抑えられたためである。2020年度では養護者支援の手引きの開発が予定され、幅広く自治体に普及するため、その編集や印刷費用,送料が計画よりも増加する可能性があり、それに充当する予定である。
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