研究課題/領域番号 |
18K02170
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
加藤 尚子 明治大学, 文学部, 専任教授 (00307977)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | トラウマインフォームドケア / アタッチメント / 施設風土 / 組織風土 / 養育集団 / チームワーク / 児童虐待 / 子どもの養育 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,児童養護施設や乳児院などの子どもを養育する社会的養護施設において,子ども虐待や不適切養育などによりアタッチメントとトラウマの課題を抱える子どもを共同養育していくために必要な職員集団および組織を形成する方法を,組織風土の変革とそれを図る包括的なコンサルテーション介入を軸として再構成することである。職員集団による子どもへの適切な共同養育を実現しつつ,互いに支えあう職員集団を形成するために必要な支援を,トラウマインフォームドケアの考え方を取り入れ再構成を図ることを目指す。 平成30年度は職員集団で子どもを養育していく際に必要なコミュニケーションとチームワークのあり方について検討すると共に,職員個人や集団が組織風土から受ける影響を明らかにすることを目指し, 1.共同養育に関する理論整理と実態調査(1)社会的養護施設における共同養育に関する理論整理と実態調査,(2)共同養育チームの形成に組織風土が与える影響に関する調査,を行った。 子どもの養育に関する先行研究を整理し,共同養育と養育チームにおけるコミュニケーションのあり方とチームワーク形成に関する理論を抽出するために文献研究とフィールドワークによる実践を行った。チームワークを向上させる機能を持つものとして共有メンタルモデル (DeChurch & Mesmer-Magnus, 2010)に着目し,子どもの養育における共有メンタルモデルとして,養育者集団が子どもと関わるなかで自己に生じる感情や子どもに対する思いを養育者同士で共有しあうプロセスが共同養育者集団を形成していくことに貢献し,同時に養育者同士を支えあう機能を持つという仮説に基づき,児童養護施設における介入実践を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,共同養育に関する理論整理と実態調査を目的として,(1)社会的養護施設における共同養育に関する理論整理と実態調査,(2)共同養育チームの形成に組織風土が与える影響に関する調査,を行った。 (1)社会的養護施設における共同養育に関する理論整理と実態調査では,子どもの養育に関する先行研究を整理し,共同養育と養育チームにおけるコミュニケーションのあり方とチームワーク形成に関する理論を抽出するために文献研究とフィールドワークによる実践を行った。 文献研究と実態調査として,①トラウマを受けた子どもを養育する際の個人及び集団の観点からの養育者の困難の検討,②子どもの養育における養育者の関係及び集団(共同)養育の理論的整理,③共有メンタルモデル(DeChurch & Mesmer-Magnus, 2010)など,チームワークおよび養育を向上させる機能に関する文献調査,を行った。そこから,子どもの養育における共有メンタルモデルとして,養育者集団が子どもと関わるなかで自己に生じる感情や子どもに対する思いを養育者同士で共有しあうプロセスが共同養育者集団を形成していくことに貢献し,同時に養育者同士を支えあう機能を持つという仮説に基づき,児童養護施設において子どもへの対応や職員集団の問題に関する個人及び集団コンサルテーション介入を行い,共有メンタルモデルがどのように養育集団の中で昨日しているかを検討した。 (2)共同養育チームの形成に組織風土が与える影響に関する調査では,組織風土と集団における養育状況に関する質問紙調査を行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度以降は,(1)トラウマを負った子どもを共同で養育していくためのチーム形成に関する理論整理,(2)トラウマを負った子どもを共同で養育していくためのチーム形成と組織風土との関連,(3)共同養育と組織風土の観点をふまえたコンサルテーション介入実践,(4)アメリカにおけるトラウマインフォームドケアの実態調査と日本への適用の検討,を行う予定である。 (1)トラウマを負った子どもを共同で養育していくためのチーム形成に関する理論整理では,トラウマを受けた子どもを養育する際の養育者の困難が,社会的養護における共同養育にどのような影響を及ぼすかを検討し,養育関係やチーム形成においてどのような支援が必要かを整理する。(2)トラウマを負った子どもを共同で養育していくためのチーム形成と組織風土との関連では,平成30年度の養育状況と組織風土に関する調査結果をふまえ,共同養育と組織風土のあり方について検討を加える。(3)共同養育と組織風土の観点をふまえたコンサルテーション介入実践では,Skypeを通した対面式のコンサルテーション介入を継続的に行い,研究によって得られた成果の妥当性と介入実践から得られる知見を相補的に検討していく(4)アメリカにおけるトラウマインフォームドケアの実態調査と日本への適用の検討では,現在Research scholarとして所属しているコロラド大学ボルダー校のInstitute of Behavioral Scienceにて行われているトラウマインフォームドケアであるLet’s Connectプログラムにについて実践内容に関する調査を行う。(1)(2)(3)をふまえ,日本の養育コミュニティの実情に合ったトラウマインフォームドケアを検討,構成していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成31年度・令和元年以降の海外調査のために予定していた事前調査を平成30年度予定していたが,平成31年度・令和元年度に繰り越しになったため,予定していた海外旅費および調査費を繰り越すこととなった。
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