研究課題/領域番号 |
18K02171
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研究機関 | 長野大学 |
研究代表者 |
小長井 賀與 長野大学, 社会福祉学部, 教授 (50440194)
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研究分担者 |
須藤 明 駒沢女子大学, 人文学部, 教授 (20584238)
川邉 譲 駿河台大学, 心理学部, 教授 (90544940)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 異文化背景を持つ若者 / 犯罪リスク要因 / 社会統合促進要因 / 多文化共生 / 日本での教育歴 / 日本語能力 / 親への愛着 / 将来の夢・目標 |
研究実績の概要 |
本研究の目的の一つは、異文化背景をもつ日本の若者について、犯罪を行った者の犯罪リスク要因と犯罪とは無縁の者の日本社会への統合促進要因を共に探り、それを緒に、日本型多文化共生社会を実現する条件を考察することである。 その方法として、異文化背景をもつ若者犯罪者と、対照群である異文化背景を持つ若年定住者にアンケート調査を行うことを計画した。犯罪群については2018・19年度に法務省の協力を得て調査を実施し、 131名から回答を得ている。一方、2020年度にほぼ同数の対象群への調査を行う予定であったが、コロナ禍のために外国人支援組織の協力を得ることができず、18名から回答を入手したに過ぎない。そのため、両者を比較しての分析ができていない。 2020年度には犯罪群の調査結果の分析に着手した。現時点で見出せたのは、日本の小学校への通学歴のある犯罪者は、1)現在の主要言語が日本語である、2)小学校に転入経験のある者は日本語の習得に苦労した、3)被差別経験を持つ者が多い、4)親への愛着や家族外の尊敬できる人の有無が、将来の夢や目標の保持に影響している。また、来日年齢と日本語能力に相関があることが、本調査で追認できた。関連して、中学校以上で来日した者では日本語能力に制約があるために、データの信頼性に疑問がある。 2021年度は、対象群への調査を進めていく。そのために、自治体や外国人支援組織に改めて協力を要請するほか、犯罪者群の社会経済的な背景と整合させるために今まで避けていた調査会社によるオンライン調査も活用する。両群を比較することで、犯罪群の犯罪リスク要因も一般群の保護要因も明らかにできる。 なお、コロナ禍が収束すれば、日本の外国人集住諸都市で半構造化のヒヤリング調査を行い、多文化共生施策の実態と課題を探っていきたい。一方、欧州の移民国家の多文化共生政策については、文献研究で代替したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍のために、期待していた外国人支援組織から協力を得ることができず、異文化背景を持つ犯罪とは無縁の一般人へのアンケート調査がほとんど行えていない。現時点では、2018・19年度に実施した異文化背景を持つ犯罪者131名からの回答の分析に着手しているが、対照群である一般人の調査が行えていないために、犯罪者群の調査結果の分析も片面的にしか行えていない。 また、コロナ禍での移動の制限のために、計画していた日本の外国人集住都市や欧州の移民国家の多文化共生政策・施策についてのヒヤリング調査も行えていない。
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今後の研究の推進方策 |
対照群である異文化背景を持つ犯罪とは無縁の一般人への調査を完了し、既に終了した犯罪群への調査結果と合わせ、日本で経験した成長・発達過程の様相、親世代と子世代である被調査者との関係性、社会関係、被調査者の社会適応の保護要因や促進要因について、明らかにしていく。 また、日本内外の多文化共生政策・施策の実態を探るとともに、それらが本研究のアンケート調査で明らかになる異文化背景を持つ若者の抱える困難、肯定的経験、社会統合にどのように対応しているかを考察していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のために、異文化背景を持つ犯罪者の対象群である一般定住者へのアンケート調査や、日本や欧州の外国人集住都市でのヒヤリング調査が行えなかったために、予定していた額の科研費を執行できなかった。 2021年度は、異文化背景を持つ一般人へのアンケート調査の完了、アンケート調査結果全体の分析、可能な範囲で外国人集住都市での半構造化のヒヤリング調査を行う予定であり、調査費・交通費等として執行する。
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