研究課題
本研究の目的は、精神障害者の家族支援のひとつである英国メリデン版訪問家族支援が本人と家族一人ひとりのリカバリーにどのような影響を及ぼすのかについて検討を行うことである。5日間の基礎研修を受講したスタッフが、所属機関の同意の取れた本人・家族に対しメリデン版訪問家族支援を試行し、介入前と介入後の本人の入院回数の変化に加え、本人・家族に対し、リカバリースケール(QPR-J)22項目版、リジリアンススケール (Resilience Scale) 短縮14項目版、抑うつ状態自己評価尺度(CES-D)20項目版、不安質問票 (GAD-7) 7項目版、家族関係尺度(FRI)日本語版、介護負担尺度日本語版(J-ZBI_8)(これは家族のみ)、患者満足度(CSQ8)8項目版のデータを収集し検討した。新型コロナウイルス感染拡大の中、メリデン版訪問家族支援の実施困難に加え、研修も減少したことから、協力をいただけたご家族は29家族にとどまり、そのうち介入前後の調査に協力いただけたご家族は16家族にとどまった。これらのデータの比較を行った結果、サンプル数の少なさもあってか、CSQ8(患者満足度)は本人で24.3点、家族で25.4点と低くないものの、前後比較では本人のRS-14(リジリアンススケール:Resilience Scale) 短縮14項目版で実施前は55.7点、実施後は65.4点で有意差がみられた(p=0.046)ものの、その他のデータでは有意差は見られなかった。しかし、今後の研究を進める上で、1)行動療法的家族療法であることから対処行動、コミュニケーション行動や家族システムの変化を測る尺度の必要性、2)介入後1年後のデータの収集、3)メリデン版訪問家族支援の効果とリカバリーの関連をさらに検討する必要性など有用な示唆が得られた。
すべて 2022
すべて 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)