研究課題/領域番号 |
18K02180
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研究機関 | 相愛大学 |
研究代表者 |
松島 京 相愛大学, 人間発達学部, 准教授 (20425028)
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研究分担者 |
松浦 崇 静岡県立大学短期大学部, 短期大学部, 准教授 (20512643)
吉田 晃高 姫路大学, 教育学部, 准教授 (70329423) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 外国につながりのある子ども / 社会的養育 / 乳児院 / 母子生活支援施設 / 施設保育士 / 社会的養護 / 母子保健 |
研究実績の概要 |
本研究は、乳児院及び母子生活支援施設に入所する「外国につながりのある子ども」および保護者に対する支援の実際から、これからの日本社会における社会的養育のあり方と施設保育士の役割について検討することを目的とするものである。なお、本研究では、子どもが、外国人であることや外国籍であることだけに限らない、多様な背景を抱えていることを示すために「外国につながりのある子ども」という表現を用いる。 今年度は、乳幼児期の当該の子どもと保護者の現状と背景、施設入所時から退所後も含めた支援の課題について、具体的に把握することに重点をおいた。外国人母子を対象とした地域の子育て支援を先駆的に実践してきた団体と、当該の乳児の保護や保護者支援の事例をもつ乳児院でのヒアリング調査を行った。 前者の支援団体は、多文化共生教育推進事業などを比較的早い段階から行っており、外国人住民への多様な情報提供ツールを積極的に作成している。しかし、母子保健に関するパンフレットなどを自治体の窓口等に配布をしても「日本語ができる人に読んでもらうように」等のやりとりで終わってしまい、必要な支援へと結びつかないことも少なくないという。後者の乳児院は、近年、当該の子どもの保護も目立つようになってきたということである。施設が課題としてあげていたのは、児童相談所との連携、見通しを持った対応、であった。一時保護委託を受けることも多く、情報がない中での一時保護における支援の困難さも述べていた。 共通する課題として、日本で生活をする外国人にとって、妊娠・出産・子育てに関する制度は複雑でわかりづらく、先を見通すことの困難さがあげられる。だがこれは、外国人、日本人であっても同じともいえる。このことからも、全ての子どもの「胎児期から自立まで」を対象とする「社会的養育」が、現状において充分に機能しているとは言い難いのではないだろうか。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(3)やや遅れている。とした理由は次の通りである。 本研究では、実際に外国につながりのある子どもや保護者の支援を行っている乳児院・母子生活支援施設職員に対するインタビュー調査を実施し、その結果に基づいて、1)乳児院及び母子生活支援施設に入所する子どもや保護者の現状と背景を把握し、2)施設入所時から退所後も含めた支援の課題を明確化するとともに、3)これからの社会的養育システムにおける乳児院・母子生活支援施設及びそこで働く施設保育士に求められる役割について提示しようとするものである。 2018年度後半、急遽、研究分担者の変更が生じ、研究グループ内の役割分担と研究計画の見直しを行うこととなった。かつ、同時期には、出入国管理・難民認定法の改正による外国人労働者受け入れ拡大の動きが進み、そうした動向をふまえた、さらなる情報収集、研究課題の整理を行う必要が出てきた。その結果、インタビュー調査の開始が当初予定よりも遅れ、2019年度半ばから実施することとなった。いくつかの施設への調査は実施できたものの、年度末に予定していた調査に関しては、新型コロナウィルス感染拡大の影響を鑑み、延期せざるを得なくなった。状況を見極めつつ、調査対象者の負担にならない形で、2020年度に実施できるよう準備を進めている。 本研究の最終的な目的に変更はないが、今年度は、できる限りインタビュー調査を実施したいと考えている。併せて、新型コロナウィルス感染拡大による影響についても、その動向整理が必要であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、引き続き、インタビュー調査を実施するとともに、調査結果の考察と研究動向の整理を行う。同時に現場へのフィードバック・インタビューを行いながら、当該の子どもと保護者を対象とした社会的養育のあり方について検討する。さらに、施設職員や保育士養成施設教員等との研究会を持つことで、施設及び施設保育士の役割の明確化や今後の課題の提示を行う。研究成果は、日本保育学会、対人援助学会等における発表や同学会誌や紀要等の論文として公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 次年度使用予定の研究費が生じた理由として、2018年半ばに、急遽、研究分担者の変更が生じしたため、研究グループ内の研究の役割分担と研究計画の見直しを行うことになったことがあげられる。このことは2019年度の研究遂行にも大きく影響し、全体的な計画の変更による研究の進み方が大きくずれ込んでしまったことがあげられる。また、2019年度末からの新型コロナウィルス感染拡大による影響が長引くことも鑑みた結果、研究費の使用計画も変更することとなった。 (使用計画) 【物品費】引き続き先行研究の整理と蓄積の継続を行うため、国内文献および外国語文献を購入する費用が必要である。新型コロナウィルス感染拡大による影響を鑑み、遠隔での研究会・インタビュー調査実施も想定した場合、その機材を購入する費用が必要である。【旅費、および人件費・謝金】1)共同研究を進めるための研究会実施に係る旅費、2)インタビュー調査にかかる旅費、3)調査分析に係るテープ起こし代金、4)研究成果の報告や情報収集に係る学会参加のための旅費、5)論文投稿時の英語要旨チェック代金、が必要である。【その他】先行研究の整理に係る国内文献および外国語文献の複写費が必要となる。研究成果の報告にかかる参加費、論文投稿時の投稿費が必要となる。
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