研究課題/領域番号 |
18K02181
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
牧里 毎治 関西学院大学, 災害復興制度研究所, 研究員 (40113344)
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研究分担者 |
大井 智香子 皇學館大学, 現代日本社会学部, 准教授 (60352829)
山 泰幸 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (30388722)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 過疎化 / 人口流動 / 地域再生 / 地域就労 / 社会関係資本 / 循環システム / 里山資本主義 / 文化資本 |
研究実績の概要 |
2018年度に続き、2019年度も事例収集や情報収集を行うとともに、事例研究の基本的枠組みや研究分析を支える分析概念の検討などを行った。年度前半では、主に三重県南部、鳥羽市、熊野市、御浜町などの地域における集落を対象に、地域が抱えている生活問題の状況や住民の取り組みについて情報収集を行った。今回の3地域は、島嶼部・海浜部と山間地を抱える地勢で、市町村内部では地域ごとに異なる生活問題を抱えていた。とりわけ島嶼部では医療・福祉資源の不足による生活危機、耕作放棄地増大による山間部での獣害被害や生活圏域内の移動手段の不足などが際立った生活課題として認識された。 地域社会の既存資源を活用して、人口流出や少子高齢化によって生ずる生活上の困難を解決するための認識枠組みをどのように構成するかという研究課題には変わりがないが、地方自治体の協力をえながら地域に定着した住民組織が、主体的に生活ニーズを満たす生活資源の開発をするプロセス分析には何が必要か意見交換しながら取りまとめてきた。高齢者、生活困窮者の就労支援・地域参加を基軸に地域再生の可能性を探り当てるには、地域社会を成り立たせている産業基盤、就業・就労構造を認識する基本的概念が必要である。まず、社会関係資本の再形成を軸に自然資本、人材資本、文化資本、経済資本を想定し、これらの資本の循環が地域再生にどのように機能しているか里山資本主義論を手掛かりに検討を進めてきた。さらに文化資本をキーコンセプトとするには文化資本を細分化する操作的概念が必要で、これらの文化資本の構成要素としては自然・工芸・日用品などの物理的資源、歴史的資源、意識的・知的資源、制度・組織的資源を想定することにした。以上が2019年度の研究到達点といえるだろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年度に引き続き、質的研究として事例収集と調査を予定していたが、年度末(2月・3月)に計画していた東北地方でのヒアリング調査ならびに伊勢志摩地域での公開研究会が新型コロナウイルスの影響で延期となったことから、研究の進捗に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は2019度と同様に、事例収集と聞き取り調査を重ねていくとともに、地域特性ごとに過疎化地域の再生類型化が可能かどうか検討を続けたい。生活困窮者の地域就労や人材活用については、今般の改正出入国管理法にもあるように外国籍住民などの地域参加も課題になってきてるため、インタビューから得られた国際的な多文化共生に関わる知見をどのように分析枠組みに入れ込むか検討を重ねたい。地域循環型生活再生システムづくりの裏付けと具体化の検証については研究対象地域を絞り込んで取り組みたい。 いずれにせよ、新型コロナウイルス感染状況もあり、どこまで現地調査が府県をまたがって可能か不透明であるが、無理のない範囲で事例集収取と選定を積み上げていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度における出張旅費の支出が、当初の計画より少なくなったため、予算に余剰が生じたが、それらを次年度の聞き取り調査費用に充てたい。また関連文献の購入も予定している。
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