研究課題/領域番号 |
18K02183
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研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
上山崎 悦代 日本福祉大学, 福祉経営学部, 講師 (80711655)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 終末期ケア / ソーシャルワーク / IPW / IPE / 地域住民 |
研究実績の概要 |
令和3年度は、2つの研究に取り組んだ。1点目は、令和2年度までに実施した「終末期ケアに焦点化した多職種連携教育プログラム」の評価研究として、質的調査を実施したことである。2点目は、「地域住民と専門職が協働する終末期ケア」に関する教育プログラムを展開したことである。 1点目として、これまでに取り組みを進めてきた専門職を対象とした「多職種連携教育プログラム」の運営等に関わった多職種に対するインタビュー調査を実施した。これまでの経過を踏まえ、プログラム実施にあたっての課題や工夫、実践上の変化について確認している。さらに、地域住民と専門職が協働する教育プログラムの実装に向けた課題等についても調査した。その結果、他の職種や事業所との交流が深まるだけでなく、プログラムの実施を契機として、多職種同士の継続的なつながりの構築ができたという前向きな意見があった。一方で、終末期ケアを取り上げ学ぶことの意義やニーズを十分に把握しきれていないという課題も浮き彫りとなった。 2点目として、E地域包括支援センター管内の終末期ケアに関わる多職種に加え、地域住民を交えた「多職種連携教育プログラム」を実施した。新型コロナウイルス感染症の影響を鑑み、オンライン形式で展開している。地域住民に対しては、事前にデバイス使用の講習会などをおこなったうえで、全3回実施している。ミニ講義やグループワーク、カードゲームなどを使い、地域住民と専門職が交流できる場面を多く創出した。実施後に行った調査結果では、地域住民との交流に対するポジティブな意見が多く挙げられた一方で、地域住民にとっては、終末期ケアやACPの話題に触れる事が難しいという意見も目立った。 オンライン上という物理的な障壁があったものの、「地域住民と専門職をつなぐ」というソーシャルワークらしい機能を発揮したプログラムを実施することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度は、地域住民と専門職が協働する教育プログラムを展開することができたという点で、一定程度の研究を推進することが出来たと考えられる。一方で、新型コロナウイルス感染症の影響により、対面集合型でのプログラムが展開できず、「相互作用を通して学びを共有する」という物理的環境を踏まえた評価研究には至っていない。 加えて、この間、専門職に対する量的・質的調査は実施してきたが、地域住民を対象としては実施できていないことが多い。以上のことから、「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は、平成30年度からの3か年で完了する予定で取り組んでいた。さらに、「同じ場で共に学び、お互いからお互いのことを学ぶ」という多職種連携教育(=Inter professional Education)の特性を活かした教育プログラムの開発・試行・評価を予定し、地域住民と専門職が同じ場で共に学び合う場面を設定することを企図していた。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響下、対面集合型を基本とするプログラムを実施することができず、研究が滞った。 一方、令和3年度は、オンライン形式ではあるが、地域住民と専門職が同じ場(同じオンライン上のプラットホーム)で学び合う教育場面を創出することが出来た。即ち、本研究の「開発―試行―評価」のプロセスのうち、「試行」までは進めることができたと考えられる。 そこで次年度以降は、主に地域住民を対象とした評価研究を重点的に実施し、本研究課題の研究計画を遂行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度の予算執行状況は、全体として少額となったことから、次年度使用額が生じた。 具体的には、物品費として、オンライン形式の教育プログラム実施に際し必要となったスキャナー購入費用等に執行した。しかし、質問紙調査を行っておらず、追加で必要となる物品が僅少であったため少額となっている。人件費・謝金も、インタビュー調査への謝礼としての予算を執行しているものの、対象者が予定よりも少なくなったことから少額となっている。また、学会発表や質問紙調査を含むすべての研究事業をオンライン上でおこなったことから、旅費の執行もなかった。研究遂行に必要な文献についても、すべてオンラインで閲覧可能なものを取り寄せていたことから、費用を支出することがなかった。 令和4年度は、この間実施できなかった、多職種連携教育プログラムのブラッシュアップと継続的な試行を進める。更に、質問紙調査、インタビュー調査及び分析を予定する。また、研究成果をまとめたリーフレットを地域住民向けに配布することで、前年度未使用額の執行を計画する。
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