研究実績の概要 |
本年度は、環境ライフスタイル評価の指標となり得る「環境マイクロバイオーム(微生物叢)」の調査、分析を行った。今回の調査対象は中学校教室であったが、環境条件や在室状況と環境マイクロバイオームとの関係性が明らかになれば、住宅へも適用できる可能性がある。 2019年を通して10分間隔で環境条件(温湿度、CO2濃度から推測できる換気量)を計測する一方、感冒流行期、感冒流行期明け、冷房稼働期、非空調期の平日、完全下校後である夕方に、1教室あたり3台の机の天板、入口引戸の引手、エアコン吹出しフィンにおけるスワブによる拭き取りサンプリングと、教室内空気のエアポンプによるサンプリングを行った。環境条件のうちCO2濃度は、大部分の時間で基準である1,000ppmを下回っていたが、一時的に3,000ppmを超えることも年間通して発生している。1か月あたり30分以上の時間で4,000ppmを超えたのは1、2、4、8月であり、夏季にも冬季にも高濃度の条件が発生していたことが分かった。 環境マイクロバイオームでは、全サンプルから検出されたOTUが22万、リード数が505万であった。1サンプル当たりのリード数は56~126×10^3の範囲にあり、教室、部位、季節による違いは見られなかった。しかし、1サンプル当たりのリード数比率が0.1%以上のもののOTU数で比べると、夏季よりも冬季が多い(OTUが多様である)傾向が見られた。そして、冬季(感冒流行期)にはMethylobacteriacea、夏季(冷房稼働期)にはStaphylococcusの組成比が、他の季節より全体的に高めであった。
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