研究課題
令和二年度は、小曲米酒の特徴的工程である固体糖化工程が酒質に及ぼす影響を明らかにすることおよび、小曲米酒および泡盛の各製造工程が酒質に及ぼす影響を明らかにするために原料や製造環境などを統一して小曲米酒と泡盛を製造し、各酒の発酵および香気特性について比較した。1つ目に小曲米酒における乳酸エチルの生成メカニズムを調べた。固体糖化なしの条件で製造するもろみに固体糖化後と同程度となる乳酸を添加し、発酵を行なった。その結果、糖化ありと同レベルの乳酸エチルを検出することができ、なおかつ腐敗臭の原因である酪酸の生成を抑制されることが確認された。これらのことから固体糖化はもろみ中の初期乳酸量を高めることで、酵母による乳酸エチルの生成を促進させること、もろみ初期pHを低げることで酪酸生産菌などの雑菌汚染を防ぐことに寄与していることを明らかにした。2つ目に研究室において小曲米酒および泡盛を製造し、香気成分と製造工程との関係を明らかにすることを試みた。小曲米酒と泡盛の香気成分を分析した結果、市販酒分析において小曲米酒の特徴香気として同定していた乳酸エチルは本試験においても小曲米酒に多く含まれていた。また新たに泡盛の特徴香気成分として1-octen-3-olを見出した。したがって乳酸エチルと1-octen-3-olは両酒の特徴に寄与する重要な化合物であることが明らかになった。加えて、市販酒では泡盛において酢酸イソアミルが多く検出されたが、研究室において酵母を統一して製造した条件では、小曲米酒において高い酢酸イソアミル量が確認された。このことから、日本で製造される酒には酢酸イソアミルに由来する香気が好まれ、それを多量に生産する酵母菌株が用いられたことが原因であると考えた。
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