フライ食品の油脂劣化度とトランス脂肪酸含量の分析は、一般的には日本基準油脂分析法に記載された化学的方法やガスクロマトグラフ法などの機器分析法を利用している。これらの方法には、先ずフライ食品からの脂質抽出が必要であるため、前処理が煩雑で、分析にも時間を要している。現場でも利用可能かつ簡便な方法の開発が必要である。そこで、近赤外分光法を活用したフライ食品の迅速的品質評価技術の開発をめざし、フライ食品の油脂劣化度と近赤外吸収スペクトルとの関わりの解明を試みた。 令和3年度では、数種類の食用植物油のポテトフライ試験を行ったと同時に、異なる劣化度のフライ油サンプルおよびフライポテト試料を採集し、フライポテトの近赤外スペクトルとフライ油の劣化度とのかかわりを検討した。その結果、いずれの食用植物油は、前年度で用いた植物油と同様に、フライ油の劣化に伴う近赤外領域におけるポテトの吸収スペクトルの変動が確認され。さらにフライ油の劣化度(カルボニル価)とそのフライポテトの近赤外スペクトルとの間に高い相関があることを確認した。また、フライポテトのままでフラッシュGCノーズHeraclesⅡという匂いセンサーを用いてポテトの揮発成分を分析したところ、ポテト油脂の劣化に伴い揮発成分の変化を確認できた。フライ油の種類によって揮発成分組成のパターンが異なっていることが示された。ポテト油脂の劣化度と揮発成分の関連性を明らかにした。
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