研究実績の概要 |
研究計画に基づき, 食卓環境が認知症高齢者の食物摂取・評価に及ぼす影響について, 多面的な分析とその成果報告を行った. まず, 期間を通じて継続検討してきた「ソース付加が認知症高齢者の食品摂取行動に及ぼす影響」については, 認知症の程度に基づいた個人差分析を行い, 認知症の程度に関わらずソース付加による摂取促進がみられたことを統計的に確認した. その成果の一部は医学系情報誌『Medical Science Digest』にて発表した. また, 昨年度に実験を行った「食卓環境における摂取量ステレオタイプの活性化が認知症高齢者の食物摂取行動に及ぼす影響」については, 取得データを整理して統計解析を行った. その結果, 食卓環境に提示したイラストを用いたステレオタイプ活性により, 食事に対する認知症高齢者の完食率や食味評価が高くなる可能性が示唆された. このことは従来, 健常若年者を対象とした研究は報告されていたが, 認知症高齢者にもステレオタイプ活性による摂取促進が生じることを実験的に明らかにしたものである. これらの成果の一部は当初, 視覚認知や食行動に関する国際会議にて報告する予定であったが, 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大状況により候補としていた国際会議が相次いで中止となったことから, 日本官能評価学会2020年度大会 (オンライン開催) にて報告した. なお, この発表により同大会の優秀発表賞を受賞することができた. 今年度は新型コロナウイルスの感染拡大状況もあり認知症高齢者を対象とした新規実験を行うことは難しかったが, これまで関係機関の協力により取得できていたデータについて詳細に分析してゆくことで, 学術的に新規で有意義な成果を発表することができたといえる.
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