本年度は畜肉および魚肉に含まれる鉄と他の成分との相互作用の影響を明らかにするため、人工消化試験により鉄のバイオアクセシビリティを求め、その影響の評価を試みた。未加熱および加熱した畜肉および魚肉を添加した餌料を三角フラスコに秤量し、蒸留水を加え、塩酸でpH 2.0に調整し、ペプシンを加え反応を開始した。37℃、120分間消化を行った。その後pH 7.4に調整し、パンクレアチンを加え同様に120分間消化した。消化前、ペプシン消化後、パンクレアチン消化後の人工消化液を遠心分離した上清を分析試料とし、鉄濃度を原子吸光光度計で求め、バイオアクセシビリティを算出した。しかし、どの餌料においても、再現性のあるデータが得られなかった。この原因を調査したところ、餌料中の鉄が均一に混合できていないことが原因と考えられた。餌料の混合方法をいろいろ試したが、試した方法すべてにおいて鉄は均一に混合できなかった。 また食品の加熱処理による鉄栄養有効性の変化についての知見を深めるため、精白米、糊化米、老化米を主体とした餌料をラットに与え、4週間飼育後の鉄栄養状態を評価した。その結果、老化米を与えた群では、ヘモグロビン濃度、トランスフェリン飽和率、肝臓鉄濃度が他群よりも有意に高値であった。この老化米投与群で認められた鉄状態の指標の上昇にヘプシジンが関わっている可能性が考えられるが、一方で老化米投与群では栄養状態の低下に伴って鉄の代謝に変化が生じ、体内鉄の分布に変化が生じた可能性も考えられた。
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