研究課題/領域番号 |
18K02197
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研究機関 | 神戸女子大学 |
研究代表者 |
後藤 昌弘 神戸女子大学, 家政学部, 教授 (20244775)
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研究分担者 |
岩田 恵美子 畿央大学, 健康科学部, 准教授 (00289034)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 低温スチーミング / アスコルビン酸 / コマツナ / 外葉 / 内葉 |
研究実績の概要 |
コマツナを低温スチーミング加熱した場合,アスコルビン酸含量が増加することを前年度に報告したが,そのメカニズムを明らかにするためコマツナを外葉と内葉及び葉身部と葉柄部に分け,60℃と70℃の低温スチーミング加熱で各々5~15分加熱し,部位別にアスコルビン酸及び還元糖含量の変化を調査した。コマツナ(兵庫県産)は仲卸業者から購入し,外葉部と内葉部に分けてスチームコンベクションオーブン(ニチワ電機製SCOS-4RS),スチームモードで加熱し,葉身部と葉柄部について,それぞれ加熱前と加熱5,10,15分でのアスコルビン酸含量(高速液体クロマトグラフ法)と還元糖含量(ソモギ・ネルソン法)を測定した。 還元糖含量は60℃,70℃加熱共に5分で減少し,5分から15分では変化はなかった。アスコルビン酸含量は,内葉部の60℃加熱では加熱前と比べて加熱5分で大幅に減少し,加熱10,15分では加熱5分より増加した。しかし,70℃加熱では加熱前と比べて有意な変化はなかった。還元糖含量は60℃,70℃加熱共に5分で加熱前より減少し,5分から15分の間では変化はなかった。また,60℃と70℃を比較するといずれの時間でも70℃のアスコルビン酸含量が高かった。葉身部では60℃加熱の外葉,内葉とも加熱5分と比べ10,15分の含量が増加する傾向にあった。葉身部の70℃加熱では60℃に比べて含量が高く,外葉部ではやや減少傾向が,内葉部では微増の傾向が見られた。これらのことから,アスコルビン酸含量は,60℃加熱では熱ストレスによりアスコルビン酸合成酵素が働いて加熱5分よりも15分で増加し,70℃加熱ではアスコルビン酸酸化関連酵素が失活する温度帯のため,アスコルビン酸の酸化分解量が抑制さる可能性が示唆されるとともに,還元糖含量は熱ストレスによる呼吸速度の増大で減少したと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低温スチーミングによるアスコルビン酸の増加現象に関して,当初はブロッコリーのみをターゲットにしていたが,同じアブラナ科のコマツナにおいても同様の現象を見いだした。また,そのコマツナを外葉と内葉,葉身と葉柄などの部位別で加熱したところ,葉身部では60℃加熱の外葉,内葉とも加熱5分と比べ10,15分の含量が増加する傾向にあった。葉身部の70℃加熱では60℃に比べて含量が高く,外葉部では減少,内葉部では微増するなど,部位による増加のちがいがみられ,葉の生育の段階や部位により温度に対する反応が異なる可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
コマツナを用いての部位による温度反応のちがいを,温度域を変えてアスコルビン酸含量と糖含量を指標に再確認する。さらに,収穫期によるちがいを調べるため,様々な時期に入手して同様の実験を行う。これらに加えて,同じアブラナ科の「大和まな」に対しても実施する。また,これらの実験を通して,明確なアスコルビン酸増加作用が確認される条件が確定した段階で,アスコルビン酸合成酵素や分解酵素などの酵素活性の測定,酵素の温度特性などの調査を行う計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品や分析用試薬の手持ちを先に用いたため,購入物品が少なかったことによる。次年度は消耗品,実験用試料(野菜類),分析用試薬の購入に充当する計画である。
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