本研究は、ゴマに含まれる特有の機能性成分であるゴマリグナンの体内利用性とそれに及ぼす調理加工の影響を調べることを目的とした。ゴマリグナンは、ラットに単回投与した場合、すばやく代謝されることが報告されている。しかし、令和元年度の研究から、ラットにおいてゴマを長期間摂取させた場合には、血液や肝臓以外の組織においてもゴマリグナンが存在するという新たな知見が得られたため、今年度は、ラットにゴマ添加飼料を一定期間摂取させた場合のゴマリグナンの体内分布を検討した。 6週齢のWistar系雄性ラットを対照群とゴマ群の2群に分け、2週間飼育した。ゴマ群にはゴマ添加(200g/kg)飼料を摂取させ、両群の飼料中ビタミン含量を同量にした。血清および各組織を採取し、ゴマリグナン濃度をHPLC-蛍光検出法で測定した。 ラットの最終体重および肝臓重量は、2群間に有意差はなかった。体内ゴマリグナン濃度の結果は、セサミンについては、肝臓と小腸で多く検出され、その他の組織ではほとんど検出されなかった。一方、セサモリンは、多くの組織で検出され、肝臓、小腸、腎臓および脂肪組織中の濃度が高かった。以上の結果から、ゴマを継続摂取した場合には、セサミンは主に肝臓に、セサモリンは肝臓の他にも脂肪組織のような貯蔵組織に存在し、セサミンとセサモリンでは体内分布が異なることが明らかになった。
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