近年、カバノキ科花粉症に関連する、花粉・食物アレルギー症候群(PFAS)による児童の果物アレルギー発症例数が増加している。PFASの主要アレルゲンは、感染特異的タンパク質の一種(PR-10 family)である。その発症を防止するためには、食品中のPR-10 familyの非意図的な摂取を回避することが重要である。しかしながら、PR-10 familyについては、野菜・果物内の含有量や濃度分布等、アレルゲン摂取リスクに関する詳細な情報が不足している。PR-10 familyを有する野菜・果物は複数種類存在し、かつ食品ごとにアミノ酸配列の一部が異なるため、その摂取リスクを管理するためには、複数のアレルゲンを同時に、かつその含有量を効率よく分析可能な、信頼性の高い分析法が必要である。そのため本研究では、一斉分析および物質の微量定量に強みを持つLC-MS/MSを用いた手法の確立を目指すこととした。 本年度は、セロリアレルゲンApi g 1の実態調査を実施し、文献値と比較してセロリ摂取時の発症リスクを評価した。このデータを含めたApi g 1分析法の論文投稿を準備中である。また、Api g 1、およびニンジンアレルゲンDau c 1について、加工食品からの抽出処理を考えて変性剤である尿素、およびグアニジン酸を用いた抽出操作を検討した。これらの変性剤が含まれると抽出効率が低下したため、抽出操作、および変性剤の検討が必要と考えられた。 一方、Dau c 1には5種類のバリアントの報告がある。本研究では購入した1種類(バリアントA)を分析対象としていることから、分析により得られたDau c 1の定量値に他の4種類の値が含まれているかどうかが不明で、値に基づいたリスク評価が困難であった。そこで、バリアントAのペプチドを指標に、全バリアントの定量が可能な分析法の構築を検討した。
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