研究課題/領域番号 |
18K02204
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
横井川 久己男 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 教授 (60230637)
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研究分担者 |
金丸 芳 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 准教授 (00243676)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 志賀毒素 / 腸管出血性大腸菌 |
研究実績の概要 |
これまでに、緑藻類ウスバアオノリ由来のラムナン硫酸が志賀毒素吸着性を示すことを明らかにしたが、他の食用緑藻類についても志賀毒素吸着性を検討した。ヒトエグサ及びスジアオノリから、同様にラムナン硫酸を精製し、志賀毒素吸着性と構造との関係を調べたところ、硫酸エステル含量がウスバアオノリ(18%)よりも多いヒトエグサ由来のラムナン硫酸(硫酸エステル含量32%)は志賀毒素吸着性が低く、硫酸エステル含量がウスバアオノリとほぼ同じスジアオノリはウスバアオノリと同等の志賀毒素吸着性を示した。ウスバアオノリ由来のラムナン硫酸を更に硫酸エステル化して、硫酸エステル含量を高めると、志賀毒素吸着性は低下することも確認した。 一方、ポリγ-グルタミン酸の志賀毒素吸着性についても、各種市販納豆を用いて検討したところ、大豆を原料とする市販品は製造者に関わらず、精製したポリγ-グルタミン酸はいずれも志賀毒素を吸着した。今後、更に詳細な検討を行う予定である。 また、志賀毒素吸着性を指標として、穀類(アマランサス、うるち米、大麦、キヌア、小麦、そば米、はと麦、ポップコーン、もちあわ、もちきび、もち黒米、もち米)、各種柑橘類並びに肉類のスクリーニングを平行透析法により行ったところ、肉類成分に志賀毒素吸着性が見られ、今後更に検討を行う予定である。 納豆由来ポリγ-グルタミン酸の志賀毒素吸着性に関わる構造解析のため、固定化ポリγ-グルタミン酸を作製すると共に、構成成分であるグルタミン酸、並びに類縁物質のグルタル酸とポリアクリル酸を固定化した標品も作成し、志賀毒素吸着性を検討したところ、固定化ポリアクリル酸以外は、すべて志賀毒素吸着性を示したことから、結合に必要な構造はグルタリル基であることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた全ての実験を行い、以下の有益な成果を得たため。 ウスバアオノリ以外の食用緑藻類由来ラムナン硫酸を精製して志賀毒素吸着性を検討し、ヒトエグサ及びスジアオノリが志賀毒素吸着性を有することを明らかにすると共に、硫酸エステル含量が志賀毒素吸着性に影響を与えることを明らかにした。また、硫酸エステル含量を高めると、志賀毒素吸着性は低下することも確認した。また、各種市販納豆からポリγ-グルタミン酸を精製し、志賀毒素吸着性を有することを明らかにした。更に、志賀毒素吸着性を示すポリγグルタミン酸の結合部位を検討し、結合に必要な構造はグルタリル基であることを明らかにした。また、志賀毒素吸着性を指標として、各種食品のスクリーニングを行い、肉類成分に志賀毒素吸着性を見出した。
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今後の研究の推進方策 |
ラムナン硫酸の更なる硫酸エステル化は志賀毒素吸着性を低下させたことから、脱硫酸化による活性の変化を検討する。脱硫酸化法としては、メタノリシス法並びにソルボリシス法を検討する予定である。なお、これらの方法は硫酸エステルの脱離以外に、一部グリコシド結合の切断による低分子化も予想されるため、実験条件の検討や低分子化したラムナン硫酸の除去も行う予定である。平均分子量が異なるポリγ-グルタミン酸とラムナン硫酸は、市販納豆由来の精製ポリγ-グルタミン酸、並びにウスバアオノリ由来の精製ラムナン硫酸を部分酸加水分解により、それぞれ調製する。市販納豆から精製したポリγ-グルタミン酸は、構成成分であるグルタミン酸のDL比が異なることを見出したため、市販納豆から精製したポリγ-グルタミン酸を用いて、DL比と志賀毒素吸着性との関連を検討すると共に、志賀毒素の結合性に与えるpH、イオン強度、共存物質、脂質環境等の環境因子についても検討する。また、ベロ細胞に対する志賀毒素の細胞毒性について、志賀毒素吸着性成分の保護効果も検討する。新たな志賀毒素吸着性食品については、各種食品のスクリーニング結果から、効果が見られた食肉類について今後更に検討を行う予定である。以上の志賀毒素吸着性物質の特性に基いて、納豆や緑藻の調理・加工法を検討し、新規機能性加 工食品の開発についても検討を開始する。
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