研究課題/領域番号 |
18K02208
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研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
我如古 菜月 岡山県立大学, 保健福祉学部, 助教 (70508788)
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研究分担者 |
田淵 真愉美 岡山県立大学, 保健福祉学部, 准教授 (60389020)
伊東 秀之 岡山県立大学, 保健福祉学部, 教授 (70253002)
新田 陽子 岡山県立大学, 保健福祉学部, 准教授 (70403318)
加賀田 江里 中国短期大学, その他部局等, 講師(移行) (70523702)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 低価格米粉 / 損傷でんぷん率 / 加工適正 |
研究実績の概要 |
市販米粉(滋賀県産ゆめおうみ、湿式気流粉砕とピンミルの併用による製粉)と低価格米粉(岡山県産あけぼの、湿式ロール粉砕による製粉)における損傷でんぷん率、アミロース含量、吸水率、水分含有率、粒度分布を測定し、米粉表面を走査型電子顕微鏡で観察した。 その結果、水分含有率は両者で大差はなかった。平均粒子径も大差はなかったが、低価格米粉は粒度分布のピークが2つに分散していた。損傷でんぷん率は市販米粉より低価格米粉が有意に高かった。これは、低価格米粉はより衝撃のかかるロール粉砕をベースとしているためであると考えられた。吸水率を測定すると、市販米粉は粉重量の6割程度吸水したのに比べ、低価格米粉は9割近く吸水した。損傷でんぷん率が高いほど水分を吸いやすいと言われているが、それを実証した形となった。走査型電子顕微鏡で米粉表面を観察すると、低価格米粉の方がより表面が平滑であり、市販米粉よりも表面における糊化している傾向にあることが伺えた。 さらに、加工適正を検討するために、上記の米粉を用いてスポンジケーキを作成し、比容積、ケーキ上部表面および内部の色の測定、スポンジケーキの高さ、クリープメーターを用いた圧縮試験およびテクスチャー試験、官能評価を行った。比容積は、低価格米粉のほうがやや大きい傾向が見られた。スポンジケーキ表面の色は、市販米粉に比較して低価格米粉のほうが明度が高かった。また、低価格米粉のほうが黄色味が濃かった。スポンジケーキ内部の色は、明度については両者とも大きな差はなかったが、市販米粉のほうが低価格米粉よりもやや黄色味が濃い結果となった。テクスチャー解析において、かたさ荷重、凝集性、付着性とも低価格米粉は市販米粉よりも低く、圧縮試験においても同様の傾向が見られたことから、低価格米粉は市販米粉よりもやわらかいスポンジであると示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、アミロース含有率および粒度の違う米粉(製粉方法は低価格米粉の方式に統一)および他メーカーの米粉を用いて、損傷でんぷん率をはじめとする分析を行えている。さらに、米粉そのものの基礎データ蓄積だけでなく、加工適正にも着手ができ、ケーキにおいては低価格米粉でも十分作成が可能ということも提示できた。さらに、結論までは導き出せてはいないが、米粉表面の電子顕微鏡観察も行えたため、低価格米粉の加工適正の裏付けとなる材料が増えた。現在、粒度、アミロース含有率の違う米粉を多くそろえることができており、研究を進めることができているため、進捗状況をこのように判断した。
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今後の研究の推進方策 |
米粉の品質分析データをさらに蓄積するとともに、加工適正もさらに幅を広げる。具体的には、アイスクリーム、焼き菓子、パン、麺、練り製品等への応用を検討し、実際に制作して各種分析を行う。 なお、学校給食への落とし込みについては、研究分担者と話し合い、現状では非常に難しいであろうとの結論になった。そこで、学園祭などのイベントに来られた方(年齢層が幅広く、小学生も含む)で希望者に対して米粉加工品を提供し、官能評価を行い分析をすることで、将来学校給食で応用するための一助になれるようにしたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用試薬や消耗品等を極力節約し、品質を保つ範囲内で安価なものを購入するようにしたこと、発表学会が近隣の県で行われたため、交通費や宿泊費がかからなかったこと、人件費のかかる官能評価の回数が、当初予定していたよりは少なかったことなどが挙げられる。次年度に今回実施できなかった部分は実施する予定であり、学会発表なども積極的に行う予定ではあるが、新型コロナウイルス感染防止の観点から、様々な学会がすでに中止・延期するとの報告があるので、状況を見ながら適宜調整していく。
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