研究課題
食品産業界では、食品を安心安全に提供する製造・評価システムの開発が進められている。少子高齢化社会に向けて生産性向上・オートメーション化が急務である。本研究では、食品の品質管理において省人化した客観的「おいしさ」評価指標の開発を目指している。五感の中で視覚情報を代替する画像データは、高度化した撮像デバイスと人工知能(AI)の融合技術によりその取得と解析が簡易になってきた。一方で、食品の画像解析は、撮影環境の差異や光源の影響により複雑化している。本年度は、画像分析に注力し国内で広く栽培されている作物の品種判別を検討した。一般的に食品の産地や品種は、気候・風土により、物性値や栄養成分が異なるため、容易に判別できるとされている。しかし、実際にキーとなる物性値と栄養成分の特定を行う事例は少なく、1つの試料に対し多様な分析機器を用いて複数回測定することになる。今回取得した物性データは、糖度(Brix%)、pH、グルコース量、フルクトース量、グルコース・フルクトース総量、クエン酸量、糖酸比、水分率、リコピン量とした。これらデータの多重共線性を確認した。また、ロジスティクス回帰分析を行った。名義尺度に品種を説明変数に物性を入れ、それぞれの回帰係数を算出した上で、名義尺度と説明変数の関係で偏回帰係数の標準誤差が大きいと判定された物性値を明らかにした。次に、品種同定に繋がる物性値選択を行うため、ロジスティクス回帰分析を通した変数選択を実施し、p値が小さくなる物性値を確認した。さらに、ロジスティクス回帰分析にて特定した変数を用いてクラスター分析を実施した。このクラスター分析の手法はward法としデンドログラムを作成し分類を行うことが可能になった。
2: おおむね順調に進展している
今回多様な分析データを追加することが可能になり、より明確な分析やデータ解析が進んだため、研究の進展に寄与した。
国内や海外にて発表された研究指針との本質的な相違を調査検討し、本研究の独自性や新規性をこれまで以上に伸ばすよう、研究開発の推進を行う。今後は、コンピュータビジョンの技術を新たに導入し、得られたデータの数値信号解析などの技術とのフュージョンが重要になる。また、機械学習を駆使した評価手法の開発をこれまで以上に目指す。
国内外における研究調査をもとに方針を変更する必要があった。今後の研究をさらに早め、計画を立案し実施に結び付ける。本研究は、昨年度までコロナ禍にて研究が進まない状況にあった。2024年度は、現時点までに構築した食品の評価システムの有用性や精度の検証、ならびに、既存の様々な物理的・化学的な分析機器との整合を図る。予算調整を行い、計測原理の異なる多様な分析機器、例えば、分光器や導電率・pH計・熱分析機器・表面材料試験機などの中から選別して購入し、得られたセンサデータの融合・統合を行う。また、機械学習といった情報処理には、高性能なサーバーの使用を視野に入れている。さらに、国内・海外への学会へ出向き、情報発信を精力的に実施する予定である。
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産業応用工学会論文誌
巻: 12 ページ: 110~112
10.12792/jjiiae.12.1.110