研究実績の概要 |
Indoleamine 2,3-dioxygenase(IDO)は免疫細胞をはじめ、全身に広く分布しているトリプトファン代謝の律速酵素である。IDOによって産生されるキヌレニンは芳香族炭化水素受容体の内在性リガンドとして働き、免疫抑制作用を示す。そのため腸管で活性化されたIDOが大量のキヌレニンを合成すると生体の免疫系に大きな影響があると考えられる。 腸管に発現するIDOを良く発現する細胞の一つは樹状細胞であり、また摂取した栄養素等が最初に体内にコンタクトする場も腸管である。そこでマウスの大腿骨および脛骨の骨髄から樹状細胞を取り出して初代培養を行った。樹状細胞のIDO活性化の陽性コントロール作成のために、樹状細胞の培養培地中にサルモネラ菌由来のリポタンパク質(LPS)、もしくは乳酸菌(C60)を添加して刺激したところ、IDO活性化因子の候補であったサイトカインTNF-αは約16倍に増加したが、IFN-γは検出されず、IDOの活性化も認められなかった。 IDOは炎症によって惹起され、LPSはToll様受容体4(TLR4)を介した起炎剤として一般的であり、また乳酸菌刺激では乳酸菌中の二重鎖RNA(dsRNA)がToll様受容体3(TLR3)を介して樹状細胞を刺激するが、樹状細胞単独ではこれらの抗原刺激によってIDOは活性されないことが明らかとなった。 今後はT細胞との相互作用を考え、樹状細胞とT細胞の共培養、もしくはT細胞が放出するIFN-γを添加し、樹状細胞におけるIDO活性化のメカニズムを解明していく。また腸上皮細胞に発現したIDOの影響についても調べるために腸上皮の株化細胞(Caco-2細胞)が本研究で使用するのに適当であるかを調べていく。
|