研究課題/領域番号 |
18K02215
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研究機関 | 四国大学 |
研究代表者 |
板東 絹恵 四国大学, 生活科学部, 教授 (70208726)
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研究分担者 |
北畑 香菜子 四国大学, 生活科学部, 助教 (60761682)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 調理実習 / 食育 |
研究実績の概要 |
【目的】調理実習で作る料理の難易度の違いよる学習者の心理的側面の違いを主観的および客観的指標を用いて比較し、食育としての調理実習について検討した。【方法】2019年8、9月に、栄養系学科の女子大学生6名(21.3±0.5歳)を対象に、3人グループを作り介入調査を実施した。心拍データから交感神経活動度(LF/HF)を、介入前後に唾液中αアミラーゼ活性(アミラーゼ)を測定した。また質問紙として心理的安定度を測るPOMSと自由記述、パーソナリティを測るBig Fiveを行った。調理実習では、サンドイッチを中心とした難易度の低い献立と、魚の三枚おろしが調理作業工程にある難易度の高い献立を比較し、さらに調理実習と座位の机上学習とも比較した。【結果】調理実習前、中、後、試食中それぞれのLF/HFでは、難易度の低い献立と高い献立の平均値に有意な差はなかった。しかし経時的な推移をみると、難易度の低い献立では調理実習後のLF/HFが実習前程度まで下がっているが、難易度の高い献立では実習中より実習後が高まった。そして調理実習と机上学習の変化を個別にみると、作業の違いに伴う経時的なLF/HFの推移は、調理実習において個人間の差が大きかった。実習中のLF/HFと Big Fiveとの有意な相関関係は見られなかった。一方、調理実習前、後のアミラーゼについて、それぞれ難易度の違いで比較した結果、有意差はなかったが変化率では難易度の低い献立の調理実習が有意に高かった。POMSは調理実習後に低下し机上学習後に上昇した。特に、難易度の低い調理実習後「緊張-不安」が有意に低下した(t=3.78,p=.01)。以上の結果から、献立の難易度による明らかな心理的相違はみられなかったが、調理実習による交感神経の活性化は、自由記述を含む主観的認知として、心理的安定度が高まるといったこれまでの知見と同様の結果がみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでは、客観的指標として唾液中αアミラーゼ、および心拍センサによるLF/HF、主観的指標としてPOMS質問紙と自由記述を用い、調理実習前、中、後、試食中の比較を行ってきた。しかし介入としての調理実習内容については検討していなかった。そのため今回は、介入内容に焦点を当て、難易度の高い調理作業と難易度の低い調理作業での心理的状況を検討した。日程を分け、心拍センサを装着してデータを集積しながらの調理実習であるため、対象者数は6名と少なかった。しかし1名も欠席することなく、研究への協力が得られた。その結果、調理作業内容の違うデータの検討が可能となり、さらには、机上作業についてもデータ集積ができた。今後は対象者の違いについて、栄養系ではない学部学科に所属する学生の調理作業時のデータを集積し検討したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは、栄養系に在籍する学生のデータを中心に集積してきた。その理由は、研究代表者が所属する学科の学生が、時間的にも、実施する場所的にも、対象者として協力が得やすかったためである。今後は、栄養系以外の学部学科に在籍する学生を対象としたデータの集積を検討したい。2019年度冬に本研究を実施し、栄養系以外の学部学科における複数名の協力が得られているもののデータ数が少ない。そのため、さらに対象者数を増やしてデータの集積を図り、研究の精査をしたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
【理由】例年参加発表している学術総会の一つが、研究者の所属大学で開催されため、旅費が削減できた。 【使用計画】2020年度実施の調査のため、消耗品費として心拍センサディスポーザブル装着用電極パット、POMS質問紙、唾液αアミラーゼ測定のチップなどの購入に充てたいと考えている。
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