研究課題
【目的】大学生の調理実習は、対象者や状況の違いにより汎用的能力の育成を図ることができる。また調理は、認知と運動が協同的かつ統合的に働かされる行為である。さらに複数人での作業には、コミュニケーションや協調性が必須である。そのためグループで行う調理実習は、単なる生活技術の獲得プロセスだけでなく、アクティブラーニングとしての食育と捉えることができる。今回は栄養系と栄養系以外の学科に所属する学生の、実習後の主観的指標を分析した。【方法】調査対象は、大学生34名(20.7±1.0歳)で、栄養系の学生17名と、栄養系以外の学生17名。各々がグループで調理実習を行った直後、自由記述のアンケートを実施した。【結果と考察】KJ法による分析の結果、「困難・緊張・不安・疲労感」「食材への苦手意識」「普段の生活との比較や振り返り」「未来志向」「他者との関わりや協力」「学び・発見」「作業や出来栄えへの快の評価」「達成・充実感」の8分類が抽出された。単語や文節の記述数は、栄養系が34、栄養系以外の学生が63であった。栄養系では特に「困難・緊張・不安・疲労感」「作業や出来栄えへの快の評価」「学び・発見」が多かった。栄養系以外では「作業や出来栄えへの快の評価」が最も多く、次に「普段の生活との比較や振り返り」「他者との関わりや協力」「学び・発見」の順で多かった。特徴的な相違点は、栄養系は「普段の生活との比較や振り返り」が抽出されなかったのに対して、栄養系以外は多く抽出された点にある。これは調理実習が、机上の講義や立位での実習と違い、五感を使った体験的学びの場であることの影響も考えられる。一方、「作業や出来栄えへの快の評価」はいずれも高く、次の作業へのモチベーションを高める結果をもたらしている。それは多彩な「未来志向」の記述からも示唆された。
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日本家政学会誌
巻: 73(2) ページ: 34-42
10.11428/jhej.73.100