研究課題/領域番号 |
18K02217
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
芦田 かなえ 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 次世代作物開発研究センター, 主任研究員 (90450329)
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研究分担者 |
井ノ内 直良 福山大学, 生命工学部, 教授 (80193621)
久保田 結香 福山大学, 生命工学部, 助手 (60762698)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 高アミロース米 / 調理条件 / 難消化性澱粉 / 澱粉構造 |
研究実績の概要 |
高アミロース米は澱粉中のアミロース含有率が25%以上の米であり、難消化性澱粉を多く含む米として注目されている。高アミロース米の普及と新品種育成のためには、複数のタイプの高アミロース米品種系統を用いて、調理した際の食品物性と難消化性澱粉の消長を明らかにし、おいしく摂取できかつ難消化性澱粉を高めることの可能な調理条件を明らかにする必要がある。 2019年度は、高アミロース米および比較となる中アミロース米を用いて、通常の炊飯およびピラフ調理(米を油で炒めた後に炊飯)を行い、調理直後の他、冷蔵/冷凍・解凍/再加熱など、調理後に異なる条件を組み合わせて難消化性澱粉含有率を測定した。油の添加による難消化性澱粉含有率への影響を調査した結果、中アミロース米の炊飯米は約0.2%の難消化性澱粉含有率を示すが、ピラフの難消化性澱粉含有率は約0.4%を示し、通常の炊飯米の約2倍の値であった。高アミロース米を用いた場合、ピラフの難消化性澱粉含有率は炊飯米と同程度の約1.7%であり、油の添加による難消化性澱粉の増加は認められなかった。炊飯米でもピラフでも、高アミロース米では調理後にある条件を組み合わせると、難消化性澱粉含有率が2.5%程度に上昇することが見出された。中アミロース米でも調理後の条件によって難消化性澱粉含有率が炊飯米では約0.3%、ピラフでは約0.6%に上昇したが、高アミロース米と比較すると非常に小さい値であった。また、複数の高アミロース米の澱粉のヨウ素吸収曲線、側鎖長分布、吸熱曲線、粘度特性、精製アミロペクチンの構造を明らかにし、2017年産の米においてもae変異を持つ米澱粉の構造と熱糊化特性は他の品種と大きく異なることが確認できた。また、炊飯後に難消化性澱粉を多く生成するae変異体の米澱粉から難消化性澱粉を回収し、その構造特性の解析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
農研機構では、高アミロース米について調理方法や調理後の保存方法や保存後の加熱の有無によって難消化性澱粉含有率が変化することを新しく見出すことができた。高アミロース米において、通常の炊飯後よりもさらに難消化性澱粉含有率を高める加工方法の開発につながる重要な知見であると考える。福山大学では複数品種系統の高アミロース米澱粉の構造と物理特性を詳細に解析するとともに、難消化性澱粉そのものの構造の解析を進めており、計画通りにおおむね順調に進展している。しかし、新型コロナウイルスの蔓延により、農研機構においても福山大学においても出勤自粛や実験の中断を余儀なくされており、今後の影響が懸念される。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、複数の高アミロース米品種を用いて米粉麺を調製し、麺の調理による難消化性澱粉の消長を明らかにする。また、2019年度に見出した難消化性澱粉を高める可能性のある調理後の条件を詳細に調査し、より難消化性澱粉を高めることが可能か検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が人事異動により北海道からつくばに異動したが、つくばでの契約職員がほとんど実験を実施できなかったこと、代表者の家庭事情により出張ができなかったことから、次年度使用が生じた。残額は、調理のための研究環境を整えるために使用する他、市販の高アミロース米およびその米粉の購入に使用する。また、最終年度になるため、結果取りまとめのための打合せや学会発表に必要な旅費として使用する。
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