研究課題/領域番号 |
18K02218
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
赤坂 修一 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (00501066)
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研究分担者 |
牛腸 ヒロミ 実践女子大学, 生活科学部, 教授 (80114916)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ラム波 / 織物 / 力学物性 / 直交異方性材料 |
研究実績の概要 |
本研究では、経糸(縦糸)と緯糸(横糸)を織り合わせた直交異方性材料である織物について、ラム波を用いて力学特性を計測する装置を組み立て、力学特性の異方性を評価することを目的としている。 ラム波は、構造物の形状に沿って伝搬する弾性波(ガイド波)の一種である。材料の一部を加振すると、界面で境界条件を満たしながら伝搬し、その伝搬速度は、材料の力学物性(引張・せん断弾性率、ポアソン比)や密度に依存する。伝搬速度の周波数依存性を計測し、直交異方性板を伝搬するラム波の伝搬速度と各物性パラメータとの関係式を用いることで力学物性パラメータが得られる。 本年度は、計測システムの構築、実験に用いる織物の選定を行った。計測システムの加振源には、音波(スピーカー)を用いた。織物を局所的に加振させるため、スピーカーを金属製のボックス内に配置し、金属製のパイプを通して、織物に照射した。ラム波の伝搬(測定)方向に一定間隔でレーザードップラー振動計による振動速度計測を行うことで、伝搬速度が得られる。ただし、面内異方性の計測では、測定点が大量(数千から数万点)になることから、電動ステージとオートフォーカス付きレーザードップラー振動計を用いて、自動計測が可能なシステムを構築した。織物をいくつか選定した後、実際に振動速度の計測、解析を行い、15°間隔で各方向の引張弾性率を算出した。横糸方向(0°)、縦糸方向(90°)について、動的粘弾性測定から得られた引張弾性率と比較した結果、よく一致した。また、各方向の弾性率は、横糸方向から縦糸方向の弾性率まで連続的に変化し、音波を加振源とした本システムで織物の引張弾性率の異方性の測定が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度の計画では、織物にラム波を伝搬させ、力学特性を得るために必要な装置構成や測定条件、計算手法を検討し、次年度において多点測定、解析の自動化を行うこととしていたが、初年度において、音波を用いた自動計測システムの構築、引張弾性率の計算手法の決定ができており、当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
初年度において、音波を加振源とした自動計測システムの構築、引張弾性率の計算手法の決定ができている。測定周波数をより高周波数域とすることで、引張弾性率以外の力学物性パラメータである、せん断弾性率やポアソン比の算出が期待できるため、本年度は、超音波領域に拡張したシステム改良を行う。また、測定データから引張・せん断弾性率、ポアソン比を算出するプログラムを作製し、解析の自動化を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に購入予定であった、オートフォーカス付きレーザードップラー振動計が予定よりも安く購入できたこと、また装置構成の検討を行う上で、冶具などの消耗品を購入予定であったが、音波での計測システムを構築したため、音波以外の加振源使用に必要な消耗品の購入を見送ったことにより、残額が生じた。 次年度に、超音波を用いた計測を行う際の消耗品購入費に充てる予定である。
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