本研究では、経糸(縦糸)と緯糸(横糸)を織り合わせた直交異方性材料である織物について、ラム波を用いて力学特性を算出する装置を組み立て、非破壊・微小ひずみでの弾性率の異方性を評価することを目的としている。ラム波は、平板中を伝搬する弾性波(ガイド波)の一種であり、複数のモードがあり、各モードの伝搬速度が、材料の力学物性(引張・せん断弾性率、ポアソン比)や密度に依存するため、任意のモードの伝搬速度を計測することにより、力学物性が得られる。 これまでに、音波、超音波により、100kHzまでのラム波を励起し、サンプルの面外振動を自動計測するシステムを構築した。装置、治具、入射信号等の改良により、測定精度を向上させた。綿ブロードの測定・解析より、弾性係数マトリックスを得ることができ、既存の測定法である動的粘弾性測定(DMA)における経糸、緯糸方向の弾性率とよく一致した。また、織物の面上の各方向の弾性率を算出でき、異方性の評価が可能となった。 本年度は、織物の力学物性のさらなる解析のため、サンプルに任意の張力を印加した状態で計測ができるよう新たに固定用治具を作成した。これまでの測定では、サンプルの弛みを防ぐために、サンプル幅あたり75g(0.33cN/mm)の荷重を経糸、緯糸方向に印加して金属枠に固定したが、今回、8.79cN/mm、15.4cN/mmの荷重を与えて枠に接着した。比較として測定したDMAによる弾性率の荷重依存性では、40cN/mmまで荷重に比例して弾性率が増加したが、今回の測定では、荷重の増加により、経糸、緯糸方向ともに弾性率の増加したものの、DMAよりも低い値だったことから金属枠への固定が不十分であったと考えられる。今後、固定法の改良が必要であるが、本測定においても荷重印加による弾性率増加を確認することができた。
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