研究実績の概要 |
本研究はタンパク質が内在する潜在的なアレルゲン性の有無や程度を検出し、アレルゲン性を評価することが可能な試験系を開発することにある。評価系として、単球様株化細胞THP-1をアレルゲンに対する応答性と増殖能を維持する細胞に分化させ、アレルゲンマーカー候補遺伝子のアレルゲンによる発現誘導をアレルゲン性の指標とする系を想定している。昨年度報告では、GM-CSF/IL-4刺激を行ったTHP-1細胞(以下、樹状細胞様細胞と言う)のアレルゲン応答性ならびにアレルゲンの検出限界について検討をおこなった。本年度は、THP-1細胞におけるマーカー候補遺伝子の発現誘導が、自然界に広く分布している微量のリポポリサッカライド(LPS)によって引き起こされることが判明したので、この点について検討を報告する。 樹状細胞様細胞にLPS(エンドトキシン)を曝露した結果、アレルゲンである卵白アルブミン(OVA)、β-ラクトグロブリン(β-LG))曝露時に発現増加がみられていたアレルゲンマーカー候補であるCD54ならびにCD83遺伝子の発現増加が見られた。このことから、CD54, CD83の発現誘導はアレルゲン特異的応答ではないことが判明した。一方、アレルゲン曝露時のCD54およびCD83発現誘導率(マーカー候補応答性)は樹状細胞様細胞よりも未分化のTHP-1細胞(以降、単にTHP-1細胞と言う)で高くなることが判明した。以上のことから、以降はTHP-1細胞を用いて実験を行った。OVA、β-LGに含まれるエンドトキシン濃度を測定したところ、THP-1細胞に対してCD54, CD83の発現を誘導するだけのエンドトキシンを含有することが判明し、OVA、β-LGによるCD54, CD83の発現誘導はエンドトキシンの混入が原因であることが示唆された。
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