日本における犯罪は2002年をピークに減少を続けてきたが、子どもが被害対象となる連れ去り事件は後を絶たない。地域では、子どもの見守り活動が実施され、行政による活動支援、環境整備も少しずつだが進んできた。しかし、活動の担い手不足が深刻化し、これまでのような学校・保護者・地域の連携による見守り活動は次第に困難になってきている。これらの背景から、近年急速に進歩する情報通信技術を使った子ども見守りシステムの導入が増えており、本研究は、新しい見守りシステムの効果と課題、地域の生活への影響、今後の地域見守り活動の役割を検討することを目的としている。 令和元年度に、全国の自治体を対象に、自治体が主導する子ども安全対策事業の実態、その中でもICタグなどを利用した新たな見守りシステムの導入実態および課題を明らかにする調査を実施した。その結果、新しい子ども見守りシステムの導入率は低いが、地域の見守り活動の担い手の減少や高齢化の実情から、地域活動を補完するものとして今後の導入に前向きな自治体の存在が明らかになった。一方では地域特性から当該システムの必要性を感じていない自治体もあった。導入自治体からは、当該システムが子どもの安全確保に役立った事例が報告された。 令和5年度は関東圏においてWEBによる調査を実施し、小学生保護者を対象にICタグ等を活用した見守りシステムの利用状況を把握した。その結果、①子どもの登下校時や放課後の安否確認のために、見守りシムテムへの加入やキッズ携帯等を携帯させている保護者が一定存在すること、②半数以上の地域で登下校の見守り活動が行われ、保護者の参加も一定割合見られること、③地域の見守り活動の担い手が減少する中、全体として今後は子どもの見守りはIT機器が担うのがよいとする意見よりも、地域の人の目による見守り活動は必要だとする意見が多いこと、等が明らかとなった。
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