研究課題/領域番号 |
18K02228
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研究機関 | 東京家政大学 |
研究代表者 |
小林 理恵 (粟津原) 東京家政大学, 家政学部, 准教授 (00342014)
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研究分担者 |
原田 萌香 東京家政大学, 家政学部, 期限付助教 (20808018)
笠岡 宜代 (坪山宜代) 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 国立健康・栄養研究所 国際栄養情報センター, 室長 (70321891)
友竹 浩之 飯田女子短期大学, 家政学科, 教授 (90300136)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 災害 / パッククッキング / アレルゲン |
研究実績の概要 |
災害時における食物アレルギー患者は栄養不足やアレルギー症状の面で致死的状態になる可能性が非常に高い。3年計画の初年度である2018年度は食物アレルギー患者の災害食支援に「パッククッキング法」を活用するために,熱源と飲用水が制限される状況を想定し,炊き出し料理の中でアレルゲン除去食をパッククッキングした際のアレルゲン混入の実際を明らかにすることに取り組んだ。 東日本大震災において提供された頻度の高いアレルゲン食品(小麦、乳、卵)を使用し,パッククッキング法の利用が想定できる炊き出しメニューとして「シチュー」を抽出した。炊き出しシチューの中で,ご飯とアレルゲン除去シチューをパッククッキングした。この時,ポリ袋は1枚及び2枚重ねの2条件で比較した。調理品は凍結乾燥後,専用ミルにて粉末試料とした。検査対象アレルゲンはグリアジン,β-ラクトグロブリン,オボアルブミンとし,アレルゲンアイELISA IIのプロトコルに従いスクリーニング試験を行った。この時,8点での検量線の直線性はr=0.9以上を条件とした。 アレルゲン除去食における各アレルゲンの検査結果はポリ袋の使用枚数に関わらず10μg / g以下であり,アレルゲン混入は認められなかった。すなわちパッククッキング法を用いることにより,炊き出しシチューの中で上記の各アレルゲンフリーのシチューとご飯を調製することは可能であり,この方法は自助・共助・公助のいずれの場面でも応用可能と考える。しかし,粘度の高い炊き出しシチューの中でパッククッキングを実施すると,炊き出しシチューがポリ袋に付着する。実験過程では注意を払いポリ袋内部からアレルゲン除去食試料を採取したが,災害時には同様の配慮は期待できず,調理後の開封時にポリ袋に付着したアレルゲンが混入するリスクが高い。これを回避するためには,ポリ袋を2重使用することが望ましいと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アレルゲン除去食について、ポリ袋の枚数(1枚,2重)を変えてパッククッキングした場合のアレルゲン混入の実際は、ELISA法によるスクリーニング検査にて,混入の危険性は極めて低いことが明らかとなった。アレルゲンの混入は,調理品の粘度により異なる可能性があるが,粘度の高いシチューでしか検討できていないため,概ね順調に進展していると判断している。また,アレルギー患者は感受性の相違もあり,災害時という高いストレス時においては,極めて微量なアレルゲンの混入でもアレルギー症状を発症する可能性がある。スクリーニングでは陰性であったものの,PCR法により,さらに詳細なアレルゲン混入の検証が必要であると考えている。 また,利用者に広く安全性を示すためにも,パッククッキングに使用するポリ袋からの酸化防止剤の溶出分析については,専門機関の研究員とのディスカッションをふまえ,パッククッキングに使用すると考えられるポリ袋を複数収集し,委託分析の準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は以下の3項目について検証を進める。 1.考案したアレルゲン除去食は,少人数での食味評価は行っているものの,官能評価による喫食の適否の判断が必要である。炊き出し料理の中でパッククッキングしたアレルゲン除去シチューと,通常調理で仕上げたシチューとを嗜好型官能評価する。 2.収集したポリ袋試料の酸化防止剤溶出の実際を確認するために,これらのポリ袋でパッククッキングをした際の,各溶媒(油,酢,水,酒)中の溶出成分を食品分析センターに委託し分析する。 3.アレルゲン混入の検証は,粘度の低いスープでも実施し,スクリーニングの結果に関わらず,これまで検証したアレルゲン除去食は全てPCR法により分析を行い,さらに詳細なアレルゲン混入の検証を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
アレルゲン混入の検証に関わる分析のうち,ELISA法(スクリーニング検査)による試験が順調であり,追加実験の必要が無かった。また,確認検査として同じ抗原抗体反応を利用したウェスタンブロット法よりも,PCR法を用いた方が良いのではないかというディスカッションがあり,スクリーニング以降の試験が2年目以降に持ち越されたことが使用額の繰越の要因となった。 従って,繰り越された研究費は,2019年度において計画されている実験のうち,PCR分析及び酸化防止剤の溶出分析の委託費用に充てる予定である。
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