研究課題/領域番号 |
18K02230
|
研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
松梨 久仁子 日本女子大学, 家政学部, 准教授 (20184244)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 清拭 / 摩擦刺激 / 摩擦力 / 押圧力 / 肌トラブル |
研究実績の概要 |
清拭素材としてどのような素材が”肌に優しいのか”を明らかにするため、拭き取り用素材として使用されるタオル、ガーゼの他、肌着用のニットやウエットティシュなど20種類の素材を試料として選択した。これらの素材を摩擦擦特性(平均摩擦係数MIU値、平板法による摩擦係数)から肌への刺激について検討した。素材を系統別に比較すると、マイクロファイバータオル>無撚糸タオル>ガーゼ、通常タオル>ニット地の順にMIU値は小さくなる傾向が得られた。 これらの試料から通常タオル、無撚糸タオル、ニット地2種、ウエットティッシュの6種類を試料として採用し、人工皮膚を拭いた時の清拭者の指先にかかる力と人工皮膚側にかかる力をそれぞれ接触力センサー・ハプログと触感フォースプレートを同期させて検出した。その際、モーションキャプチャも併せて同期させ、拭き取り時の動作を観察した。拭き取り力は本人の感覚に任せ、やさしく拭く、強く拭くの2段階とした。また、フォースプレートをテンシロン万能試験機に取り付け、平板法摩擦特性試験による摩擦力と押圧力についても測定した。いずれの実験も乾燥状態の試料と湿潤状態の試料について行った。 人工皮膚を強く拭いた時と弱く拭いた時の接触力と押圧力及び摩擦力の差は明瞭であった。試料間の差については、タオル、ニット、ウェットティッシュの順に小さくなる傾向がみられ、乾燥状態よりも湿潤状態の試料の方が押圧力は大きくなったが、摩擦力は小さくなる傾向が認められた。また、平板法で測定した動摩擦係数とフォースプレートのデータより算出した動摩擦係数はほぼ一致することが確認でき、フォースプレートは摩擦特性の測定に有用であることが確認できた。拭き取り力を弱から強に変化させた場合、拭き取り時の摩擦力は、いずれの試料においても、乾燥状態よりも湿潤状態の方が摩擦力の増加率は小さいことがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請時の計画では、乳幼児を持つ保護者(父母、祖母など)および保育士などを対象に、子育てあるいは保育の現場において子どもたちの肌に関して気をつけていることやスキンケアの方法などについて、アンケート調査を行う予定であった。しかし、保育園との日程調整がうまくいかず、実施できていない。 収集した試料については、様々な物性を測定する予定であったが、時間的な問題で摩擦特性についてのみの測定で終わっている。
|
今後の研究の推進方策 |
①アンケートの実施:拭き取り素材の物性に関して、摩擦特性以外に圧縮特性、曲げ特性などの測定を追加し、収集した試料全体については多変量解析の手段によってグループ分けをする。 ②試料の生地特性の把握と試料選定:現在までの進捗状況で述べたように、保護者及び保育者へのアンケートが実施できていないため、できるだけ早い時期にアンケートの実施を行う。 ③被検者による肌のふき取り動作の確認実験:頭部マネキンを使用し、乳幼児の顔の清拭を想定した拭き取り動作を観察する。被検者は大学生と小さい子どもを持つ母親とする。 ④肌のふき取り実験:皮膚トラブルがない成人を対象にし、刺激の少ない拭き取り方法について官能検査を行う。その際、母指、示指、中指の指先に触覚力を測定できるハプログセンサ(現有装置)を装着させ、清拭をしている時の指先の力を測定しておく。 ⑤選定試料の評価実験:③と④の結果を踏まえて、実験用の拭き取り動作を決定し、触感フォースプレートとモーションキャプチャの同期測定により、拭き取り力測定と拭き取り動作解析を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
交付額が申請額より大幅に減額され、本年度は装置でほぼ全額を使用したため、残額が試料の購入などに充てるには少額となってしまった。残額は来年度の交付額と合算して、人件費や試料購入費として使用したい。
|