研究課題/領域番号 |
18K02231
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研究機関 | 山梨学院大学 |
研究代表者 |
名取 貴光 山梨学院大学, 健康栄養学部, 教授 (00528721)
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研究分担者 |
萱嶋 泰成 山梨学院短期大学, その他部局等, 教授(移行) (90365453)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | HDAC / リグナン / hda-2 / skn-1 / pmk-1 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、未解明のヒストン脱アセチル化酵素(Hdac)の活性増強によるヒストン脱アセチル化調節を介したアンチエイジング効果の存在とその分子メカニズムを明らかにすることである。 これまでの検討の結果、ポリフェノールの一種であるリグナン化合物は、Hdac活性を増強し、ヒストンの脱アセチル化を促進すること、また、pmk-1やsod-1、gcs-1遺伝子を発現誘導し寿命を延長していることが明らかとなった。しかし、どのようなメカニズムでこれらの遺伝子の発現が誘導されているのか、ヒストン脱アセチル化によるクロマチンのコンフォメーション変化によるのか、また別の遺伝子を介した制御であるのか、など詳細は不明であった。 発現誘導のみとめられたpmk-1遺伝子はskn-1のリン酸化を引き起こし、核内への移行を誘導することが知られ、また、skn-1遺伝子は抗酸化やストレス耐性などの様々な遺伝子の発現を誘導することが知られている。従って、リグナン化合物がHdacを活性化した後、pmk-1遺伝子の発現増強がおこり、次いで、skn-1のリン酸化による核移行と寿命延長に関わる遺伝子の発現誘導が起こっているものと考えられる。そこで、各リグナン化合物(シリンガレシノール、セコイソラリシレシノール、ピノレシノール、ラリシレシノール)によるHdacの活性化と遺伝子発現の関係を確認するため、線虫(C.elegans)の野生型とhda-2変異体それぞれの株をリグナン化合物で処理し、各遺伝子の発現量の比較を行った。その結果、野生型では、セコイソラリシレシノールとピノレシノール、ラリシレシノール処理群でpmk-1遺伝子の発現増強が確認された。一方、hda-2変異体ではセコイソラリシレシノール処理群以外では有意な差は認められなかった。このことから、ピノレシノールの効果はhda-2に強く依存した現象であることが推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は、HDACの活性増強によるアンチエイジング効果の存在とその分子メカニズムを明らかにすることである。本年度は、野生株とHDAC変異体(C.elegans)を用いた検討によりリグナン化合物の一つであるピノレシノールがhda-2(哺乳類ではHdac1,2)に強く依存してpmk-1遺伝子の発現を誘導していることを明らかにした。しかし、それ以外の検討、アセチル化量の定量やタンパク質発現(ウエスタンブロッティングや免疫染色など)の確認を進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
リグナン化合物による寿命延長がヒストンのアセチル化量の変化に相関していること、また、Hdac遺伝子がpmk-1の遺伝子発現に直接関与していること明らかにするための実験、各遺伝子の変異体や欠損株を用いた寿命延長効果の検討を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
国外留学により当該研究で予定していた実験が実施できなかったため。
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