研究課題/領域番号 |
18K02232
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研究機関 | 神戸女子大学 |
研究代表者 |
梶木 典子 神戸女子大学, 家政学部, 教授 (00368490)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 移動型遊び場 / モバイルプレイ / 冒険遊び場 / 遊び / 子ども / 都市公園 / プレイワーカー |
研究実績の概要 |
冒険遊び場づくり活動団体の団体数と活動箇所数をできるだけ正確に把握し、複数箇所の遊び場を展開している団体の現状を明らかにすることを目的として、アンケート調査を実施した。調査項目を最小限に限定した、回答者に負担がかからないように実施した結果、有効回答率が67%に達した(過去最高回収率)。 活動団体数は前調査よりも約100団体増加しており、年々活動を開始する団体数が増加していることから、「子どもの外遊び」への関心が高まってきていることがわかる。また今後も活動を始める団体が増えることが予想される。活動団体や活動箇所数は地域によってばらつきがあり、人口数による要因も考えられるが、都市化の進む地域(都市部)は、より冒険遊び場づくりへの関心が強いことがわかった。複数箇所で活動を行う団体は全体の3分の1を占めていることがわかった。 移動型遊び場の先行事例としてドイツの「プレイバス」活動は開始から約50年の歴史があり、約160のプレイバスのNPO団体がイニシアティブを取って活躍している。本研究ではドイツのプレイバス連盟に所属する団体を対象に、ミュンヘン、バイロイトの2都市において活動実態に関するヒアリング調査を行った。 ドイツでは子どもにとって遊ぶことは、大人になる準備として重要であるという考え方が広まっているため、子どもの遊びに関する活動に行政からの資金提供がされやすい。また、子どもの遊びに関わる大人が専門職(ソーシャル・ペタゴーなど)として位置付いて活躍しているため、人件費も保証されることが多い。移民、難民支援や家庭に課題のある子どもたちも含めた「すべての子どもたち」に遊びを提供することを目的に移動型遊び場の活動を行っているため、公園や学校など多様な場所で活動している。また、活動団体の活動内容がより専門化しているため、遊び内容と車の種類が豊富であるということが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度は、本研究の基礎的資料となる日本国内における移動型遊び場の実態を明らかにするため、冒険遊び場づくり活動団体を対象にアンケート調査を行った。 日本における移動型遊び場の先行事例として、千葉県四街道市の拠点型遊び場と都市公園へ出張する移動型遊び場の事業について、また、東日本大震災後に被災地において活動を継続している仙台市の「冒険あそび場・せんだい・みやぎネットワーク」と気仙沼市の一般社団法人プレーワーカーズを対象にヒアリング調査を実施した。 先行事例としてドイツの移動型遊び場の国際連盟(Federal playbus organisation of Germany, Spielmobile e.V.)を訪問交流し、移動型遊び場づくりの活動が活発に行われる背景や推進するための方策等について、現地調査やヒアリング調査を行った。ドイツでは、訪問した団体の活動の中に教育を意識したものがあり、行政との共同事業にも教育分野で活動しているものも多くあることがわかった。この点においては、日本の遊び場づくり活動が入り込めていない部分であることに気づかされた。子どもの遊びを通してつながれる分野は環境団体、最先端技術、都市計画等、多岐にわたっているため、専門が異なる団体がネットワークを組み、日々情報交換を行いながら協働する仕組みづくり・ネットワークの重要性が明らかになった。そして、これらを支える人材養成について更に調査する必要があることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、2018年度に日本の冒険遊び場づくり活動について得られた基礎的資料をもとに、個別の団体の活動についてより詳細な実態調査を実施することにより、移動型遊び場の基礎的データ構築を試みる。 移動型遊び場の先行事例として協力しているドイツの移動型遊び場の国際連盟(Federal playbus organisation of Germany, Spielmobile e.V.)のメンバーが来日し、日本の拠点型遊び場や移動型遊び場の先行事例について視察し、ドイツの遊び場づくりとの比較を行う。ドイツからみると日本の拠点型遊び場は塀がないため、子どもの安全性をどのように担保しているのかが興味深いと指摘されており、日独の遊び場比較により得られる知見を収集していく。また、ドイツのプレイワーカー養成機関(レムシャイドアカデミー等)への訪問を行い、プレイワーカーの養成について調査を行う。移動型遊び場の活動についてさらに調査を行い、それが子どもの遊びや子どもの権利を尊重する都市計画施策等の中にどのように位置づけられているのかについて研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度は、概ね研究計画が順調に進んだが、予定していたタブレット購入を見送ったこと、アンケート調査等に関わる人件費が計画よりも安価であったこと、外国出張時のWIFIルーター賃借料が予算よりも高額であったことなど、これらを差し引きして、次年度へ130,647を繰り越すこととなった。 2019年度は、ドイツからの移動型遊び場関連の訪日があり、この行程を随行して日独比較の意見を収集するために、約2週間の調査(東京、埼玉、山形)を計画しており、旅費・調査記録者・通訳者への謝金が必要である。また、2018年度から実施している日独・モバイルプレイ研究会の開催に対する謝金も必要となる。そして、ドイツの移動型遊び場に関わるプレイワーカー養成施設への外国調査のための旅費等を計画している。 引き続き、適正な執行をしていく予定である。
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備考 |
梶木典子,「ドイツのまちで出会った移動型遊び場(モバイル・プレイ)」,家とまちなみNo78 一般財団法人住宅生産振興財団,2018年11月,pp32-33
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