研究課題/領域番号 |
18K02233
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研究機関 | 中村学園大学 |
研究代表者 |
大和 孝子 中村学園大学, 栄養科学部, 教授 (70271434)
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研究分担者 |
安藤 優加 中村学園大学, 栄養科学部, 助手 (90760877)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 機能性成分 / ストレス / 行動 |
研究実績の概要 |
本研究ではラットを用いてわさびの辛味成分アリルイソチオシアネート(AITC)及びしょうがの辛味成分6-ジンゲロール(6-Gin)が行動に対してどのような影響を及ぼすのか,ストレス負荷前後の行動を比較することにより検討した。さらに,これら辛味成分の脳機能への役割を探るべく,ラット脳海馬からの細胞外5-HTの放出に及ぼすこれら辛味成分の影響についてマイクロダイアリシス(微小透析)実験により検討した。拘束ストレス負荷によりコルチコステロンは有意に上昇し,抗酸化力は有意に減少したことから,30分間の拘束ストレスはストレス負荷方法として有用であることが確認された。24時間あたりの総自発運動量は,投与前日に比べ投与1日後に生食水(Cont),AITC及び6-Ginのすべての群においてストレス負荷により有意に減少した。その後,Cont及びAITCでは投与1日後に比べ2日後に有意な回復が認められたが,6-Ginではほとんど変化がみられなかった。OF試験の各区画の滞在時間においてContではストレス負荷により不安様行動が有意に増加したが,AITC及び6-Ginでは変化はみられなかった。また,EPM試験の各区画の滞在時間はストレス無しのCornerにおいてAITCはContに比べ有意に低値を示した。従って,AITC及び6-Ginの投与はストレス負荷による不安様行動の増加を抑制する作用があることが示唆された。マイクロダイアリシス実験では,辛味成分の投与後100分間における脳海馬細胞外セロトニン放出量は AITC及び6-Gin投与により,Contに比べいずれも約30%の増加が認められた。更に機能性成分との比較のためにストレスに対する嗜好飲料の影響について,マウスの摂水,摂食,行動に及ぼす影響についても検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
機能性成分を用いた行動実験及び解析は,概ね順調に進展している。現在は,主に脳内神経伝達物質の測定(マイクロダイアリシス実験)により,機能性成分の脳機能への影響についての実験を行っている。さらにストレスを負荷した場合についても検討する予定である。しかしながら,新型コロナウイルス感染症の影響により当初の予定よりデータの蓄積がやや遅れていることも事実である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,ストレスに対する機能性成分の投与による影響について,行動実験(オープンフィールド試験,高架式十字迷路試験)で得られたデータをもとに更なる解析を行う予定である。また,マイクロダイアリシス実験については,ストレスと機能性成分との関連について脳内神経伝達物質(セロトニン)の測定をもとに実験を進めていき,研究成果の報告に繋げたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は行動実験において,次年度繰越金により行動実験解析用ソフトをバージョンアップすることができ,実験のスピード,内容の幅ともに向上した。一方,脳内神経伝達物質測定のためのマイクロダイアリシス実験は,今後データの蓄積を行っていく予定であり,そのための透析用プローブや脳固定手術用ガイドカニューレなどの消耗品や試薬類の物品費予算が必要である。また,次年度は,本研究の最終年度となり,研究成果として学会発表のための旅費及び論文執筆のための予算を必要とする。以上,次年度使用金額が生じた理由である。
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