教育学部生の教育の一つとして,薬剤耐性菌が身近な生活環境中にも存在することを認識させるために,学生のスマートフォン(以下,スマホ),学部棟内のハンドドライヤー,自宅の洗濯機を例に薬剤耐性菌の調査を行なった。 ハンドドライヤーについては,岩手大学教育学部棟に設置されている装置の内の10台を選び,それらの送風中の薬剤耐性菌を調査した。スマホと洗濯槽については岩手大学教育学部生を主な対象として薬剤耐性菌の調査を実施した。学生に調査の意義を伝え,了解を得た後,サンプリングし培養した。抗菌薬としてアンピシリン(ABPC),テトラサイクリン(TC),ストレプトマイシン(SM),リファンピシン(RFP)を用い,濃度はいずれも12.5 mcg/mLとした。ABPCを含む培養液で増殖がみとめられた微生物と,TCを含む培養液で増殖がみとめられた微生物について,PCRにより耐性因子の検出を行った。 学生のスマホについては,74台の内の28台(38%)にて抗菌薬を含む培養液で微生物の増殖がみとめられた。PCRの結果,TCを含む培養液で増殖した微生物についてはtet(K)が検出された。PCR産物を精製しsequencingしたところtet(K)であることが確認された。洗濯槽については,33台の内の13台(39%)にて抗菌薬を含む培養液で微生物の増殖がみとめられた。ハンドドライヤーについては,10台の内の9台(90%)にて抗菌薬を含む培養液で微生物の増殖がみとめられた。PCRの結果,TCを含む培養液で増殖した微生物についてはtet(K)とtet(M)が検出され,sequencingしたところtet(K)とtet(M)であることが確認された。 ABPCを含む培養液で増殖した微生物についてはいずれもAmpC型β-ラクタマーゼファミリー遺伝子のPCR解析を行い,幾つかにおいては明瞭なPCR産物をみとめた。
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