フルクトースによって誘導される単純性脂肪肝では,脂肪酸合成系遺伝子の発現が亢進する。この脂肪酸合成系遺伝子の発現亢進メカニズムを解明するために,これら遺伝子の転写領域におけるヒストンアセチル化に焦点を当てin vivoで解析を行った。高フルクトース食を短期間摂取させ誘導した単純性脂肪肝ラットから肝臓を採取し,リアルタイム定量PCRによる脂肪酸合成系遺伝子の発現量およびクロマチン免疫沈降法による脂肪酸合成系遺伝子転写領域のヒストンアセチル化の度合いを測定した。高フルクトース食摂取により,脂肪酸合成系遺伝子の中でも特に,FasnおよびElovl6の遺伝子発現が極めて著しく増大した。さらに,これら遺伝子転写領域(転写開始点近傍から+5000 bp近傍)のヒストンアセチル化はヒストンH4よりもむしろヒストンH3で強く誘導された。本研究の成果を集約すると,高フルクトース食摂取によって誘導される単純性脂肪肝における脂肪酸合成系遺伝子の発現亢進には,これら遺伝子プロモーター領域における転写因子ChREBPの結合増大,さらには転写領域におけるヒストンH3のアセチル化亢進が関与することが示唆された。これらのことから,脂肪酸合成系遺伝子上のChREBPの結合やヒストンH3のアセチル化を抑制するような食生活や食事因子の探索が,フルクトースの摂取がもたらす単純性脂肪肝を予防するため重要である。
|