研究課題/領域番号 |
18K02238
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研究機関 | 京都教育大学 |
研究代表者 |
深沢 太香子 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (90423574)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 発汗 / 体温調節 / 加齢 / 衣服 / 圧迫 / 熱中症 / 熱失神 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,衣服による圧迫を熱中症予防へ利用する可能性を検討することである.熱中症が生じるような高体温時に人体を圧迫すると,皮膚血流が減少して脳血流を確保しやすくなるものの,圧迫は発汗を抑制する作用も併せ持つため,身体冷却に重要な発汗を妨げて,さらに体温上昇を引き起こす恐れもある.そこで,本研究では発汗を確保しつつ,熱中症リスクを低減する衣服の圧迫部位とその圧力を検討するとともに,圧迫による発汗反応への年齢による影響も検討する. 研究初年度にあたる今年度における研究実績は,(1)身体圧迫が鋭敏な部位の選定,(2)圧迫力の設定,(3)若年者を対象とした発汗反応,である.以下に具体的に述べる. (1)身体圧迫部位の選定:人体に付与された圧迫力と圧迫感に関する研究報告を収集し,文献調査を行なった.その結果,身体圧迫が最も鋭敏に知覚されやすい部位は,胸や背であった.そこで,20歳代女性を対象として,圧迫力と圧迫感に関する予備実験を実施したところ,胸・背部は,人体中,圧迫に対して鋭敏な部位であることが確認された.また,これらの部位は,圧迫による発汗抑制を生じる部位であることも確認された.そこで,本研究での圧迫部位を,胸背部に設定することとした. (2)圧迫力の設定:圧迫による発汗抑制は,強い圧迫が付与された際に発現することが既報の研究より明らかとなっている.衣服は長時間着用されることを踏まえ,長時間にわたる胸背部への圧迫力と圧迫感,発汗量に関する予備実験を,20歳代女性を対象として実施した.その結果に基づいて,胸背部へ付与する圧迫力は,胸囲における周径を基準として,胸囲,胸囲の-1 %,胸囲の-5 % に設定することとした. (3)若年者を対象とした発汗反応:上述の予備実験に基づいて,20歳代女性を対象として,胸背部における圧迫が発汗反応に及ぼす影響について,被験者実験を遂行中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,衣服による圧迫を,熱中症の一つである熱失神予防へ活用する可能性を検討することを目的として,実施されている.熱中症は幅広い年齢層で発症することを踏まえると,圧迫による発汗抑制の加齢による影響について把握しなければならない.そこで,本研究では,この圧迫による発汗への加齢による影響について,体温調節へ強く反映する全身性の反応と,発汗抑制の生じる部位とそれを修飾する局所性の反応より検討している.研究初年度では,圧迫条件を設定するために,圧迫を付与する身体部位と付与する圧迫力に関する予備実験を実施した.そして,その結果を基にして,本実験におけるプロトコールを設定して,若年者を対象とした測定を開始することができ,現在も遂行中である.以上より,本研究は着々と進展していると判断された.
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今後の研究の推進方策 |
研究初年度である平成30年度において,本実験を遂行するための予備実験が進められ,若年者を対象とした測定を開始することができた.そこで,今後は,対照群である若年者の被験者数を増やして,測定を継続して,データを得る.得られた結果について,データ解析をして,圧迫による発汗抑制とその修飾について,圧迫力との関係から検討する.得られた研究成果について,関連の学会にて積極的に発表を行う.さらに,高齢者を対象とした本実験を開始する準備を始め,順次,測定に着手する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究に掛かる人件費・謝金が,計画当初時よりも大幅に上回ることが見込まれた.そこで,現在所有する発汗計(3台)で測定できる計測部位を厳選することとしたため,次年度に繰り越す研究費が発生した.次年度は,本研究で使用する精密計測機器(蒸散計2台)の保守点検・校正の年度に該当するので,本年度の研究費残額をその費用の一部として使用する.
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