熱失神リスクの低減に,衣服による圧迫が活用しうるか検討するために,本研究では,下部胸囲を圧迫し,人体加温時の生理反応を調査した.下部胸囲を圧迫すると,前腕と背の発汗量は低下する一方,それを補完するために,前額と胸の発汗量は増加した.しかしながら,圧迫が付与されても全身の蒸散量と発汗量は変動しなかったため,体温上昇に圧迫の影響は認められなかった.下部胸囲を圧迫すると,若年者の場合には前額に冷却効果が得られやすく,高齢者の場合には前額皮膚温が高い値を示したことから,頭部における皮膚血流量が増加していたと推察された.このことから,下部胸囲の圧迫は,熱失神予防に活用できる可能性が示唆された.
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