在宅生活が困難になった高齢者が移り住んだ高齢者住宅や高齢者施設からの再転居を防ぐ住環境整備の在り方について考察するため、当初の計画では有料老人ホームへの訪問調査により生活支援の「事後対応(生活困難時対応)」を明らかにする予定であったが、コロナ禍で実施が困難となったため、高齢者の施設入居の実態を把握するアンケート調査を実施することとした。現在、多種多様な高齢者施設・住宅が整備されているが、入居者はどのような経緯で施設等への入居に至っているのか、ミスマッチやニーズの変化による施設間転居はどの程度発生しているのかの実態を把握し、高齢期の住環境整備の課題を明らかにしたいと考えた。そのために入居の経緯を把握している家族に対して調査を実施した。 その結果、入居の決定は、6割が子ども、次いで配偶者によって行われており、施設の選択理由は立地や経済面など多様であるが、子どもの住まいに近いことが最も優先されていた。入居に至るまで、また入居後も介護者(子ども)の役割が大きいことが分かる。 施設入居時の高齢者は80代以上が7割以上、要介護度では要介護1,2の中等度が最も多かった。特養入居条件は要介護3以上だが、それ以下の要介護度でも入居ニーズが高いことが把握できた。 入居施設は身体状況がよいほど「サ高住」、「ケアハウス」、「住宅型有料老人ホーム」が選択され、身体状況が悪くなると「老健」、「介護付有料老人ホーム」が選択されていた。6割が自宅から病院を含めた施設へ入院・入居した後に現在の施設に入居しており、そのうち4割に複数回の転居経験があった。身体状況の低下が転居の主な理由で、ケアニーズの変化に応じて施設間を移り住んでいた。 施設に対しては「最期まで暮らせる」ことを望む家族が9割弱と多いが、実際に可能と考えているものの割合は65%と希望よりも低く、そのことが施設間転居につながっていると考えられる。
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